労働問題に関する用語集
離職証明書は,会社を退職したことを証明する書類のことをいいます。
使用者は,労働者から請求された場合は,その使用期間や業務の種類,事業における地位,賃金または退職の事由(退職の事由が解雇であった場合はその理由も含む)等を離職証明書としてまとめ,遅滞なく交付しなければなりません(労働基準法22条1項)。
離職証明書の書式については特に法律上決まったものはなく,その用途もさまざまです。また,離職証明書に記載される内容については,労働者が選択することができます(同条3項)。
なお,離職票も,会社を退職したことを証明する書類ではありますが,離職票については,もっぱら雇用保険の失業給付を受ける際に必要となります。
離職票は,雇用保険の失業手当(基本手当)を支給される際に必要な書類で,退職後10日前後で退職した会社から渡されます。離職票は,ハローワークに対して提出する書類であり,既定の書式が用意され,「離職票1」と「離職票2」の2種類に分かれています。
「離職票1」は,失業手当(基本手当)の振込先となる金融機関を指定する用紙で,「離職票2」は,退職前の6ヵ月間の給与額と退職した理由が記載されている用紙です。失業手当の金額は,「離職票2」に記載された給与額を基礎に算出されるため,必ず過去の給与明細と比較して間違いがないかを確認する必要があります。
また,同じく「離職票2」に記載されている退職理由によっても失業手当の支給開始時期や支給期間が変わってくるため,この点も間違いがないか確認が必要です。
なお,離職証明書も,会社を退職したことを証明する書類ではありますが,同書類の書式は自由であり,その用途も特に決まっていません。
リストラとは,会社側が,人員整理等の経営上の理由により労働者を解雇することをいいます。整理解雇とも呼ばれます。
リストラは,病気や違反行為といった労働者側に原因がある解雇とは異なり,使用者が経営上の理由により解雇をすることになるため,労働者を保護するためにさまざまな制限が課せられています。
最近の裁判例によると,(1)人員削減の必要性,(2)人員削減手段として整理解雇を選択することの必要性,(3)被解雇者選定の妥当性,(4)手続の妥当性の4つの事情を総合して解雇の有効性を判断しています。
※(1)から(4)の具体例については,人員整理および整理解雇にて詳しく解説しています。
なお,リストラを行う直前に,退職金の上乗せなどを行う早期退職優遇制度によって希望退職者を募る場合がありますが,これは,上記の(2)を意識してのことと考えられます。
このように,経営上の理由があっても,企業側は労働者を一方的に解雇できるわけではありません。したがって,リストラを言い渡された場合でも,安易に受け入れず,まずは弁護士に相談することが重要です。
労働基準法では,厚生労働省内に労働基準局,各都道府県に都道府県労働局を置き,さらに各都道府県をいくつかの区域に分け,その区域内に労働基準監督署を置くこととしています(労働基準法97条1項)。
これらの行政機関のうち,労働基準監督署は,労働基準法や最低賃金法など,労働者を保護する法律について,その実効性を確保するために設けられている機関です。
労働基準監督署は,事業主が労働基準法などに違反した場合に,当該事業者に対して違法行為を止めるよう指導や監督などを行います。また,労働局の職員が各労働基準監督署内に間借りをする形で,個別労働紛争の調停やあっせんも行っており,行政機関を通じた労働紛争の解決を促しています。
しかし,これらの機関は,多様化する労働トラブルに対して,監督,規制が不十分である点や,多くの相談件数に対する処理能力の限界から対応の迅速性や柔軟性に欠ける点,罰則自体が軽いため,十分な実効性が確保されていない点など多くの問題を抱えています。
さらに,紛争解決のあっせん手続をしても,あっせんそのものに法的な拘束力がなく,会社側にあっせん手続を拒否されたり,提示されたあっせん案に応じてもらえないことも少なくありません。
このように,行政による指導,監督のみでは解決されないケースも多いため,実際に労働トラブルに巻き込まれた際には,法律の専門家である弁護士に相談することが早期解決のために重要となります。
労働基準法は,労働条件についてなど,労働に関する規制を定めた法律です。労働組合法,労働関係調整法とあわせて「労働三法」と呼ばれることもあります。
労働基準法は,その1条において,「労働条件は労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすものでなければならない」と定めています。労働基準法は単なる取締規定ではなく,その実効性を確保するため,労働基準法が定める基準に達していない合意を無効とし,無効となった部分については,同法が定める基準によるものとしています(労働基準法13条)。この効力は,就業規則や労働協約に対してもおよびます。
労働者が,使用者から労働基準法に違反した行為を受けている場合には,労働基準監督署などの行政機関に対して指導や監督をするよう求めることができます。しかし,これらの行政機関については,指導,監督に法的な拘束力はなく,実効性も低いことから,労働紛争の解決のためには法律の専門家である弁護士に相談することが重要となります。
労働契約とは,労働者が使用者に対して労働力を提供し,使用者がこれに対して賃金を支払うことについて,その条件などを定めた契約です。労働契約は,労働者と使用者の双方が合意することによって成立します(労働契約法6条)。
契約するにあたり,使用者は,労働者に対して賃金や労働時間等の労働条件を明示しなければならず,また,賃金の支払い方法,労働時間,残業,年次有給休暇等,さまざまな事項が法律の規制を受けます。なお,法律上はできる限り書面により確認するものとされていますが,必ずしも書面である必要はなく,口頭で締結することも可能です。
また,労働契約には,期間の定めがある場合とない場合があり,期間の定めがある場合を有期雇用契約(期間の定めのある労働契約)といいます。派遣社員,契約社員,パートタイマーは多くの場合,有期労働契約であり,いっぽうで,いわゆる正社員は,期間の定めのない労働契約を締結している場合が一般的です。
労働契約は,労働者の労働条件を決める重要な契約となりますが,法に反する条件でこれを結ぶことはできず,そのような条件は無効となります。そのため,労働契約の内容に問題があると思われる場合には,まず法律の専門家である弁護士に相談し,対応を検討することをおすすめいたします。
労働者派遣法とは,それまで,労働者供給事業にあたるとして職業安定法44条で禁止されていた労働者派遣事業を解禁した法律です。
労働者派遣法は,昭和61年の施行当時,限られた業務についてのみ労働者派遣を認めていました(いわゆる「ポジティブリスト方式」)。しかし,グローバル化による社会情勢の変化や企業側のニーズを受けて,近年立て続けに法律が改正されており,現在は限定された禁止業務以外については自由に労働者派遣事業を行うことが認められています(いわゆる「ネガティブリスト方式」)。
派遣禁止業務は,湾港運送業務,建設業務,警備の業務など,業務の性質上,派遣という形態になじまないもののみに限定されており,そのほかの業務については広く労働者派遣事業を認めています。
もっとも,何の制限もなく労働者派遣事業を行うことが認められているわけではなく,派遣労働者の保護および派遣先の労働者保護のために一定の制限が加えられています。
派遣労働者の保護のための規制として,代表的なものに「二重派遣の禁止」があります。二重派遣とは,派遣元から派遣されてきた労働者を,派遣先が,さらに別の企業に派遣することをいいます。このような派遣を認めると,法律上の責任が不明確となり,派遣労働者(派遣社員)の労働環境が悪くなることや,中間業者が入ることで賃金が不当に引き下げられるおそれがあることから,労働者派遣法や職業安定法で禁止されています。
また,派遣先の労働者保護のための規制として,代表的なものに「派遣期間の制限」があります。派遣労働には,受け入れ期間に制限がある業務とそうでない業務(ソフトウェア開発,通訳等の専門的なスキルが要求される職種で,いわゆる「専門26業務」)の2種類があり,受け入れ期間のある業務については,派遣先労働者の雇用環境を保護する目的で原則1年間(最長3年間)とされています。
労働条件とは,賃金,就業時間,休日等,労働者が働く際に決めておかなければならない各種条件のことをいいます。
労働条件は,労働協約,就業規則,個別の合意,労使慣行や労使協定等によって決められます。労働基準法により労働条件の最低基準が規定されており,労働関係の当事者は,この基準を下回ってはならないことはもちろん,その向上を図るように努めなければならないとされています。そのため,労働契約によって定められた労働条件が,労働基準法で定められている基準に達しない場合は,その部分が無効となり,代わりに同法で定められている基準によることになります。
また,労働契約の締結に際しては,賃金,労働時間その他の労働条件を明示しなければならないと義務付けられており,労働者が予測していなかった低い労働条件で働くことを強いられるようなことがないようにするとともに,労働条件についての紛争を予防しています。
労働条件の不利益変更とは,労働契約を結んだ後で,労働者に不利益となるような内容に労働条件を変更することをいいます。
労働者と使用者は,雇用契約を締結する際に,賃金や業務内容,勤務地などの労働条件について,双方の合意によって決定します。
その労働条件が,後になって使用者側から一方的に変更されてしまうと,生活が不安定になり,労働者は落ち着いて仕事をすることができません。そのため,法律では,この労働条件について,使用者が一方的に,労働者にとって不利益となる内容に変更することができないよう,さまざまな規制をしています。
具体的には,使用者と労働者が労働条件の変更に合意した場合はいいのですが、そうでない場合には,就業規則や労働協約の変更を行わなければなりません。
就業規則等を労働者にとって不利益に変更するためには,変更の必要性があることや,その変更によって労働者が被ることになる不利益の内容や程度,変更後の就業規則の合理性などを総合的に判断して,相当と認められなければなりません。そうでない場合,就業規則等を労働者にとって不利益な内容に変更することは許されないのです。
このように,労働条件の不利益変更にはさまざまな制約が課せられているにもかかわらず,経営悪化などを表向きの理由として,給与の削減など一方的な変更を行う企業も少なくありません。そのような場合には,すぐに法律の専門家である弁護士に相談し,変更を撤回するよう求めることが重要です。
労働審判とは,平成18年4月1日より新しく始まった,個別労働関係民事紛争を解決するための司法制度です。
たとえば,会社から不当解雇された際にその無効を確認したり,サービス残業について時間外割増賃金を請求する場合などが対象となり,現在,このような事案の多くが労働審判によって解決されています。
労働審判は,労働審判官(裁判官)1名と,労使の専門的知識・経験を持つ労働審判員2名で構成される労働審判委員会にて審理されます。その中で,合意による解決(調停といいます)が試みられ,合意に至らない場合には,審判という形で労働審判委員会の結論が言い渡されます。
労働審判における最大のメリットは,原則として3回の期日で終わるため,訴訟で争う場合と比べて非常に素早く紛争を解決できる点です。1回目の期日で結論の方向性が出ることも多く,平均して73日で解決に至っています(訴訟の場合は2年以上かかることもあります)。また,訴訟と違い非公開で行われるため,当事者のプライバシーに配慮することができるほか,訴訟では入れることができないさまざまな条項を盛り込むことができるなど,非常に柔軟性が高いこともメリットとして挙げられます。
このように,労働者にとって多くのメリットがあることから,当事務所では,労働トラブルを解決する手段としてこの労働審判の活用をおすすめしております。
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