労働問題に関する用語集
解雇とは,使用者が労働者との雇用契約を一方的に解除すること(会社が従業員を「クビ」にすること)をいいます。
会社を解雇されてしまうと,労働者は生活できなくなってしまうため,法律は使用者が有する解雇権にさまざまな制限を加えています。
たとえば,使用者が労働者を解雇する場合,30日以上前に予告するか,30日分以上の手当を支払う必要があります。ただし,解雇の原因が労働者にある場合,使用者はその労働者を予告なく解雇できる場合があります。
また,たとえ上記のような予告義務を果たしたとしても,使用者は理由なく労働者を解雇することはできません。使用者が労働者を解雇するためには,労働者が会社の規律を守らないことや,従業員を減らさなければ会社の存続が危ぶまれる等の合理的な理由が必要となります。
このように,使用者の解雇権にはさまざまな制約があるため,使用者がこのような制約を守らずに労働者を不当に解雇した場合には,労働者は解雇の無効や解雇無効期間中の賃金の支払,さらには慰謝料の支払を使用者に対して求めることができます。
労働者は,一定の場合,要介護者ひとりについて,要介護状態に至るごとに1回,通算で93日を限度として介護休業を取得できます(育児休業,介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律11条)。
介護の対象となる家族は,労働者の配偶者,父母,子,配偶者の父母および労働者が同居しかつ扶養している祖父母,兄弟姉妹,孫です。なお,要介護状態として認められるのは,負傷,疾病または身体上・精神上の障害により,2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態である場合です。
この条件を満たす労働者から介護休業の申し出があった場合,事業主は原則としてこれを拒否することはできません。また,事業主は,労働者が介護休業の申し出をしたことや,介護休業を取得したことを理由として,労働者に対して解雇をはじめとする不利益な取り扱いをすることは禁じられています(同法16条,10条)。
なお,事業主には,介護休業期間中の労働者に対する賃金の支払義務はありません。ただし,介護休業を取得した労働者は,雇用保険法に基づき,介護休業給付金として休業開始前の賃金の4割の支給を受けることができます(雇用保険法61条の7)。
解雇禁止期間とは,労働者が仕事中のケガや病気,また出産などで休業が必要となった場合に,その労働者の解雇を禁止する期間のことをいいます。
使用者は,労働者が仕事を行ううえで負傷を負ったり病気にかかったりした場合,その療養のために休業する期間およびその後30日間はその労働者を解雇することはできません。また,女性労働者が産前産後休暇によって休業する期間およびその後30日間も,解雇することはできません(労働基準法19条1項)。
このように休業中の解雇が禁止されることにより,労働者は安心して病気の療養等のために仕事を休むことができるのです。
なお,使用者が解雇される労働者に対して打ち切り補償を支払う場合や,天災事変(たとえば地震など)等やむを得ない事情のために事業継続が不可能となり,その事情について労働基準監督署長の認定を受けた場合には,解雇は認められます(同条1項但書・2項)。
戒告処分とは,会社の懲戒処分のうち,労働者の将来を戒める処分のことをいいます。具体的には,会社が労働者に対し,将来問題を起こさぬよう厳重注意をするという処分になります。
多くの会社では懲戒処分として,軽い順に戒告,けん責,減給,出勤停止,懲戒休職,賞与の支給停止,昇給または昇格の停止・延期,降格,諭旨解雇処分などの処分が定められており,もっとも重い処分が懲戒解雇処分になります。
戒告はもっとも軽い処分であり,けん責と異なり通常は「始末書」の提出までは求められません。ただし,会社の懲戒権の行使である以上,会社が戒告処分を行うためには,そのことが就業規則に明記されていることが必要であるほか,戒告処分をする合理的な理由も必要であり,さらに,戒告処分をすることが社会通念上相当であることも必要になります(労働契約法15条参照)。
労働契約法16条では,「解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする。」と定められています。すなわち,普通解雇が解雇権の濫用として無効となる場合があることが,明文上認められているのです。
解雇は,労働そのものをはく奪するものであることから,それを行う場合は重大な理由がなければならないとされています。使用者が一方的に労働者を解雇する不当解雇は認められていません。
たとえば,解雇理由が労働者の能力や適格性に起因するものである場合,勤務成績や勤務態度が著しく不良であることまで要求されることがあります。また,懲戒事由にもなる非違行為(業務命令違反等)を理由とする場合には,それが重大であることが要求されることもあります。
そのような条件を満たさず一方的に解雇を行った場合には,解雇権の濫用として解雇が無効となることがあります。「ちょっと気に入らないからすぐ解雇」ということにはできないのです。
使用者が労働者を解雇する場合,原則として,少なくとも解雇の30日以上前には,解雇をすることについて通知をする必要があります(労働基準法20条)。この際に労働者に交付されるのが解雇通知書です。
労働者が急に解雇をされた場合,すぐに再就職先が見つかるわけではないため,生活に困ってしまいます。そこで,労働者の生活を脅かさないために,解雇の30日以上前の予告を必要であることとし,再就職や生活の立て直しをするための時間的余裕を確保しているのです。
解雇通知書には,解雇となった理由を記載しなければならず,その解雇が正当なものか不当なものかを判断する重要な資料となります。また,失業保険等の給付を受ける場合も,解雇通知書が必要となります。
なお,解雇予告をせずに,即時に解雇をする場合,使用者はその労働者に対して,30日分以上の平均賃金(予告手当)を支払わなければなりません。急な解雇であっても,30日分以上の賃金が支払われるならば,再就職等の一応の準備ができるからです。この場合,使用者は解雇予告をする必要はありませんが,労働者から求められた場合,解雇の理由等が記載された解雇理由証明書を交付する必要があります。
使用者が労働者を解雇する場合,原則として,少なくとも解雇の30日前には,解雇をすることについて予告をする必要があります。これを解雇予告といいます。
急に解雇をされても,労働者はすぐに再就職などができるわけではありません。そこで,労働者の生活を脅かさないため,解雇の30日前の予告を義務付けることで,再就職や生活の立て直しをするための時間的余裕を確保しているのです。
解雇予告をせずに解雇をする場合,使用者はその労働者に対して,30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。これを「予告手当」といいます。急な解雇であったとしても,30日分以上の賃金が支払われるならば,再就職等の一応の準備ができることから,このような制度が認められています。
なお,天災事変やその他やむを得ない理由で事業の継続が不可能となった場合,あるいは労働者の責任によって懲戒解雇される場合で,所轄の労働基準監督署長の許可があった場合には,解雇予告は不要となります。
また,1ヵ月以内の日雇い労働者や2ヵ月以内の期間を定められた労働者など一定の労働者については,解雇予告規制の例外として解雇予告が不要とされています。
解雇理由証明書とは,解雇の理由を記載した労働基準法22条において,労働者から請求を受けた使用者が交付しなければならないと定められている書面のことをいいます。
使用者は,解雇理由証明書において,解雇の理由を具体的に示す必要があります。たとえば,「就業規則○条に基づき解雇する」ということを記載しただけの書面では足りません。就業規則の内容と,どのような事実関係に基づいて解雇することになったのかということまで記載する必要があります。
不当解雇か否かを判断するうえでは,解雇理由証明書に書かれている理由が重要な意味を持つことになります。使用者側と不当解雇で争う場合には,まず会社に解雇理由証明書を交付するよう請求してください。
なお,使用者が,労働基準法に違反して解雇理由証明書を交付しない場合,30万円以下の罰金を受けることがあります。
会社批判とは,労働者が,会社の不当性などの批判内容を社外の一般大衆に向けて公表することをいいます。従来はビラ配布による方法が一般的でしたが,最近はホームページやブログで公表するなどの方法もとられています。
労働者には,「言論・表現の自由」が憲法上保障されているため,会社の事業場外で行う会社批判行為に関しては,会社の統制はおよばないのが原則であり,これを理由とする懲戒処分は原則として認められません。しかしながら,その批判内容が,企業の社会的信用を毀損し,企業秩序と業務の運営が阻害されるような場合であれば,懲戒処分が許される場合があります。ただし,解雇処分とまでなると処分が重すぎ,不当解雇として無効という判断がされることもあります。
なお,会社批判が労働組合活動の一環として行われた場合の裁判例として,「会社批判の内容が,会社の対外的な社会的評価の低下を生じさせ,信用を毀損する内容であったとしても,適示された事実が真実であるか否か,真実と信じるについて相当な理由が存在するか否か,表現活動の目的,態様,影響はどうかなど一切の事情を考慮して正当性を判断すべき」という判断が示されたケースがあります。
残業代における開示請求とは、残業代に関する証拠が会社に保管されている場合に、会社に対して就業規則や賃金台帳、タイムカードなど、証拠書類の開示を求めることをいいます。裁判所を利用しない任意の手続であるため、請求にかかる費用も比較的安く済むことが多い一方、開示請求に強制力はないため、会社が応じてくれるとは限りません。
家族手当とは,扶養家族を有する世帯主である従業員に対して支給される手当であり,通勤手当,役付手当,職務手当等と同じく,基本給以外に諸費用として支払われる賃金のうちのひとつです。
家族手当は,このうちの生活手当に分類されます。これらは法律上当然に支払われるものではなく,賃金規定や雇用規定等にその支給の定めがあり,その規定にしたがって支払われます。
家族手当は,世帯主たる従業員に対して支払われるものと定められていることが多いのですが,この「世帯主」の解釈について,親族を実際に扶養している従業員のみを「世帯主」として扱うことは,適法とされています。ただし,男性のみを世帯主として扱うことは違法です。
なお,家族手当は,労働基準法第37条第5項の規定により,割増賃金算定の基礎となる「賃金」には含まれません。役職手当,役付手当は割増賃金の算定の基礎に算入されますので,ここが大きな違いになります。ほかに,割増賃金の基礎として算入されない手当としては,通勤手当,別居手当,住宅手当等があります。
過半数代表者とは,労働者の過半数を代表する者のことであり,労働者の過半数を組織する労働組合がない場合には,使用者との間で労使協定を締結する権限を有しています。
過半数代表者は,使用者との間で,36協定のような重要な労使協定を締結する権限を有する重要なポジションであることから,その資格や選出方法については法令によって定められています(労働基準法施行規則6条の2)。使用者は,過半数代表者であることを理由に不利益に取り扱うことが禁止されており,対等な立場で労使協定の締結を行える仕組みになっています。
過半数代表者は,全従業員を代表する者という立場となるため,その選出には民主的な手続が要求されます。したがって,労使協定の内容や案について全従業員に知らせることができる者であり,投票や挙手などの方法により選出されることが望ましいといえます。
残業代請求において時効の更新が認められる事由の1つで、未払い残業代を回収するにあたり、判決が出るまでの間、債務者の財産の処分を禁止する手続です。
会社の経営難などの理由で残業代が回収できなくなるおそれがある場合などに、事前に会社の資産を処分できないようにして権利を保全する手段となります。
過労死とは,精神的・肉体的負担を強いられた結果,過労に陥り,疾病が誘発ないし増悪され,死に至ることをいいます。
労働の側面では,一般的に,長時間残業や休日なしの勤務など長時間労働や,過酷な業務を強いられたりすることによって過労に陥り,心筋梗塞などの心疾患や脳梗塞などの脳血管疾患,急性心不全等を発症し,永久的に労働不能または死に至ることをいいます。
このように,仕事による過労が原因で死亡するに至った過労死については,業務災害(業務上の疾病)として労働者災害補償保険法の「保険事故」であるかが問題となります。業務災害として労災認定がなされるか否かについては,一定期間における業務量・業務内容等の業務の過重性のほか,長期間にわたる疲労の蓄積,基礎疾病の有無・程度なども総合的に考慮して判断されることになっています。
また,長時間労働によってうつ病や燃え尽き症候群などに陥り,自殺する方も増えています。「過労死」は,このようないわゆる「過労自殺」も含む用語として広く使われることがあります。
環境型セクシャルハラスメントとは,労働者の意に反する性的な言動により,就業環境が不快なものとなり,就労意欲が低下し,能力の発揮に重大な悪影響が出るなど看過できない支障が出ることをいいます。
たとえば,上司が,労働者の腰や胸等をたびたび触ったり,性的な経験の有無を尋ねたり,労働者の抗議にもかかわらず,職場にヌードポスターを掲示し続けることにより,労働者が苦痛を感じ,就業意欲が低下する場合があげられます。
環境型セクシャルハラスメントの場合,対価型セクシャルハラスメントと異なり,はっきりとした経済的な不利益を伴いませんが,男女雇用機会均等法は,対価型と同様に,雇用主の雇用管理上の措置義務を定めています。
その内容は,(1)セクシャルハラスメントに関する会社の方針(行為者を懲戒処分の対象にすること)を明らかにする,(2)会社内外に相談窓口を設ける,(3)相談後の迅速な対応(事実関係を確認し,行為者を適切に処分し,被害者に対する配慮を行う)をすることです。
なお男性に対するセクハラも保護の対象とされており,環境型セクシャルハラスメントが行われたことにより被害者が精神的な苦痛を受けた場合,行為者や会社は,被害者に対して損害賠償責任を負う場合があります。
一見すると性中立的な基準に見えますが,実質的には性差別につながる基準のことをいいます。
この基準は,男女雇用機会均等法の改正に伴い導入されたものです。具体的な事例としては,合理的な理由がないにもかかわらず,募集要項として労働者の身長・体力・体重などを要件とすることは,間接差別となる可能性が高いといえます。
たとえば,コンビニの店員を募集する際に「身長170cm以上」とした場合,特にコンビニでの業務において高い身長を要求される理由はないにもかかわらず,「身長170cm以上」という条件をつけることは,身長170cm以上の男女比率から考えて意図的に女性を排除する趣旨だと考えられます。このように,一見すれば身長に関する規定なので性差別とは関係ないと思われても,その条件が性別によって顕著な違いが出る場合には,間接差別となりやすいです。
このような明示的な場合以外にも,間接差別にあたりうるものとして,コース別人事制度というものもあります。
労働契約には,期間の定めがある場合とない場合があります。期間の定めがある場合の労働契約を「期間の定めのある労働契約」(有期労働契約)といいます。派遣社員,契約社員,パートタイマーの方は,多くの場合,有期労働契約です。
有期労働契約においては,期間中は両当事者とも契約を解除することができないいっぽうで,契約期間満了により原則として契約が終了するという特徴があります。
この期間満了により当然に終了するという点は,雇用が不安定になるという側面があります。そこで,判例では,実態に基づいて実質的な保護を図っています。何度も過去に有期労働契約が更新されているような場合は,理由なく更新を拒絶することが許されなくなることがあるのです。
たとえば,雇止めの事例で,雇止めの意思表示が実質的には解雇の意思表示にあたり,解雇権を濫用しているといえるような場合は,その雇止めは許されないとする場合があります。
労働契約には,期間の定めがある場合とない場合があります。期間の定めがない場合の労働契約を「期間の定めのない労働契約」といいます。いわゆる正社員の方の多くは,この期間の定めのない労働契約を締結しています。
期間の定めのない労働契約について,民法627条1項では,当事者はいつでも解約の申し入れをすることができるとされており,労働者の退職の自由と使用者の解雇の自由が定められています。
しかし,解雇は労働者およびその家族に深刻なダメージを与えるものですので,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合には,その権利を濫用したものとして無効とされています(労働契約法16条)。解雇が生活の基盤を一方的に奪う行為であることを考え,法律によって労働者の保護を図っているのです。
偽装請負とは,実態は労働者派遣であるにもかかわらず,形式的には業務処理の請負・委託とされている場合を意味します。
そもそも,労働者派遣と業務処理請負・委託は,前者は使用者が労働者を他人に供給し,その他人の指揮命令下で業務に従事させる形態であるのに対して,後者は他人の業務ではあっても,労働者に対する業務遂行の指揮命令は使用者が自ら行うという点で異なります。そして,このうち労働者派遣については,派遣事業の適正化と派遣労働者の保護の観点から,労働者派遣法によって各種規制がされています。偽装請負は,この労働者派遣法に基づく規制を潜脱するために,形式上,業務処理の請負・委託とされているにすぎないのです。
もっとも,形式的に業務処理の請負・委託とされていても,実態が労働者派遣であれば,労働者派遣法の各種規制を受けます。たとえば,派遣禁止業務への労働者派遣や派遣事業の許可なく労働者派遣をした場合には罰則がありますし,それらをクリアしていても,労働者派遣契約の締結といった労働者派遣の枠組みを満たしていない点で,行政監督の対象となります。また,偽装請負により労働者派遣を受けた側も,行政指導や行政監督の対象となりえます。
偽装出向とは,実態は労働者派遣であるにもかかわらず,形式的には出向とされている場合を意味します。
そもそも,労働者派遣と出向は,前者は派遣労働者が派遣先と何らの契約関係に入らないとされているのに対して,後者は出向元・出向先双方とで二重の労働契約関係が生じるという点で異なります。いっぽうで,前者は制度上,派遣先の指揮命令を受けるとされ,後者は労働契約に基づき出向先の指揮命令を受けるという点では類似します。そこで,労働者派遣法の規制を潜脱しつつ,派遣先の指揮命令を受けさせるために,形式上,出向という扱いにするのが偽装出向です。
しかし,形式的に出向とされていても,実態が労働者派遣であれば,労働者派遣の各種規制を受けます。出向は本来,子会社等への経営・技術指導や人事交流,雇用調整等を目的に行われるものですので,これらの目的もなく事業として出向させているような場合は,労働者派遣であると判断される恐れがあります。
希望退職募集制度とは,業績悪化や事業編成などに伴うリストラの一環として,退職金の上乗せ支給を行うなどの動機付けを図ることで退職希望者を募り,自発的な退職を促すことで余剰人員の整理を行う制度です。この場合,使用者と労働者間の雇用契約の合意解約を目指して退職者を誘引することになります。
使用者側には,整理解雇を回避すると同時に,解雇に伴うリスク(労働者側からの不当解雇の主張)を回避しながら人員整理の目標を達成できるというメリットがあり,労働者側には早期退職に伴う退職金の上乗せなどにより,次のキャリア形成のための資金調達ができるというメリットがあります。
希望退職募集制度が問題になる場合として,外形上は労使の合意による雇用契約の解消を整えつつ,実態としては退職強要となっているケースがあります。従業員に退職に応じるよう圧力をかけたり,嫌がらせ人事を行ったりするケースがこれにあたり,このような場合には退職の強要として不法行為等になる場合があります。
ある債権につき協議を行う旨の合意がなされたときから最大で1年間、時効の完成が猶予されるというものです。
この期間内に、再度の合意をすることも可能であり、合計5年以内であれば、時効の完成を猶予させることができます。
権利に基づき強制的に相手方の財産を差し押さえてお金を支払わせる、裁判所をとおした手続です。
残業代請求においては、労働審判や訴訟で「未払い残業代を支払う必要がある」と審判や判決が出されたにもかかわらず会社が支払いに応じない場合などに、強制執行を行うことでお金を支払わせることができます。
休憩時間とは,労働者が労働から離れることを権利として保障されている時間のことをいいます。休憩時間は労働者がそれぞれ自由に利用できる時間です(労働基準法34条3項)。いわゆる手待ち時間は休憩時間に含まれません。
使用者は,労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分,8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間中に与えなければなりません(同条1項)。また,この休憩時間は一斉に与えられることが原則です。ただし,労働者の過半数代表者等との労使協定がある場合はこの限りではなく,休憩時間を交代制にすることなども可能となります(同条2項)。
なお,これらの規定に反した使用者は,6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。(同法119条1号)
ある労働者に関して,あらかじめ定められていた休日を労働日に変更したうえで,その日に就労させ,その代わりに他の労働日を休日に変更させることを休日振替といいます。
使用者が労働者に休日振替を命じるためには,業務上の必要性によっては休日振替を行うことがある旨の規定をあらかじめ就業規則に定めておくことが必要であり,定めがない場合は個別に労働者の承諾を得る必要があります。
休日振替が行われたとしても,結果として労働者は休日に就労したことにはならないため,使用者は労働者に対し,休日の就労を理由として割増賃金を支払う必要はありません。
いっぽう,休日に休日労働をさせたため,事後的に労働日に欠勤することを認めることは代休といい,事後的な休日振替ともいいます。使用者は,労働者を休日に労働させているため,後の労働日に欠勤を認めたとしても,休日割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法37条)。
休日労働とは,法定休日に労働することをいいます。
使用者は労働者に対し,少なくとも週に1回は休日を与える必要があり(労働基準法35条1項。ただし,4週間を通じて4日以上休日があれば週1回でなくても構いません),この労働基準法の規定を満たすための休日のことを「法定休日」といいます。もちろん,この法定休日より多くの休日を定めることも可能であり,法定休日よりも多く定められた休日のことは「法定外休日」といいます。
法定外休日にした労働は,労働基準法の定める割増賃金の対象となる休日労働とはなりません。もっとも,労働契約等で法定外休日の労働についても割増賃金を定めることは自由ですので,労働契約等に定めがあれば,法定外休日であっても割増賃金が発生します。
休日労働をさせた場合,使用者は労働者に対して,通常の賃金の35%以上の割合で割増賃金を支払う必要があります(労働基準法37条1項,割増率令)。つまり,休日労働をした場合には,最低でも通常の1.35倍の賃金が支払われなければならないことになります。
もちろん,労働契約などで35%以上の割合を定めることは自由であり,そのような定めがある場合には,その割合による割増賃金が支払われなければなりません。労働基準法は,あくまでも割増率の下限を定めているにすぎないのです。
ただし,所定休日に労働したからといって,それが必ず休日割増賃金を受け取れる休日労働にあたるわけではありません。休日割増賃金を受け取れる休日労働とは,法定休日に労働した場合をさすという点に注意が必要です。
休職とは,ある労働者を労務に従事させることが不適切な事情が発生した場合に,雇い主がその労働者に対し,労働契約は存続させながらも一定の期間,労務に就くことを免除あるいは禁止することをいいます。
その例としては,労働者に対する制裁として行われる懲戒休職や,労働者の負傷等を理由とした傷病休職,あるいは留学等を希望する労働者による自己都合休職,出向のための出向休職など,目的によってさまざまなものがあります。
休職の際に,労働者に対し賃金が支払われるか否かは,原則として労働協約や就業規則,労働契約の内容によります。ただし,使用者側の都合による休職の場合には,労働協約等の内容にかかわらず,賃金を請求できるとしている企業が多いといわれています。
給与とは,雇用契約における労働の対価であり,賃金のことです。この給与の内訳について定めたものが給与明細で,基本給や各種手当などの会社から支払われるお金についての情報が「支給項目」,健康保険料や厚生年金,税金などの給与から天引きされるお金についての情報が「控除項目」,給与明細の計算のもとになる出退勤や欠勤についての情報が「勤怠」にそれぞれ記載されています。この給与明細を記した書面を一般に,給与明細書といいます。
所得税法により,給与を支払う者は給与の支払を受ける者に支払明細書を交付しなくてはならないという規定が定められています(所得税法231条1項)。つまり,会社は従業員に対して,給与の支払明細書を交付する義務があります。なお,交付を受ける者が承諾すれば,電子情報で交付することもできますが,書面での交付請求があった場合には必ず書面で交付しなくてはなりません。
なお,給与明細書の遅延行為に対する罰則はありませんが,明細書を発行しなかったり,これに虚偽の記載をして交付をしたりすると,1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられます(同法242条)。
労働者は,使用者と競争関係にある企業に就職したり,自分で使用者と競合する事業を立ち上げたりすることができません。このような労働者の義務のことを競業避止義務といいます。
たとえば,自動車会社の従業員がサイドビジネスとして自動車会社をおこすことはできません。もっとも,競業避止義務が認められるための条件は,在職中か,退職後かにより異なります。
労働者は,在職中であれば,就業規則に定めがなくとも,信義誠実の原則に基づく競業避止義務を負うとされています。在職中,労働者は誠実に労働義務を果たすべきであり,使用者と競合する業務を行うことにより使用者の顧客を奪うことは許されるべきではないからです。
これに対して,退職後の場合には就業規則等特別の定めがある場合に限り,労働者は競業避止義務を負うこととなります。すでに退職している以上は,労働者の職業選択の自由を保障するべき度合いが強まるからです。また,競業禁止の程度も,競業禁止期間・禁止となる場所等,さまざまな事情を考慮しつつ必要な範囲に限定されます。
労働者が競業避止義務に違反する業務に従事した場合,使用者は損害賠償や競業行為の差し止めを請求できます。
業務委託契約とは,有償・無償を問わず,特定の仕事の処理を目的とする契約のことをいいます。同じく仕事の委託という側面をもつ雇用契約・請負契約と比較しながら説明します。
まず,雇用契約と比較すると,雇用契約では労働者が使用者に従属して行われるのに対して,業務委託契約では自己の裁量で事務を処理するという独立性を持っている点が大きく違います。また,請負契約と比較すると,請負が仕事の完成を目的とするのに対し,業務委託契約では業務の処理それ自体を目的とするため,必ずしも仕事の完成を目的とするものではないという点が大きく違います。
なお,受託者は委託者から独立して事務の処理を行うという点で,労働基準法上の「労働者」とはいえないため,請負人と同様,業務委託契約を結んだ場合は労働基準法上の保護を受けることはできません。
業務命令違反とは,業務遂行のため使用者が従業員に対して発する命令または指示に違反することをいいます。労働義務の不履行とも評価されることから,原則として懲戒事由に該当しうるとされています。
なお,業務命令は広く日常的な労働の指示のほか,人事命令,労働時間に関する命令,経営秩序の規律を目的とする命令等を含みます。
業務命令と懲戒処分との関係については,「懲戒解雇に至るまでの経緯によっては,配転命令に従わないことを理由とする懲戒解雇は,権利濫用としてその効力を否定されうる」というように,事前の経緯によっては不当解雇と判断されることもあり,一概に業務命令が有効であるからといって懲戒処分が許されるということにはならないと考えられます。
契約社員については,法律上の定義はありませんが,一般的には,期間の定めのある契約で雇用された社員のこととされています。
雇用期間にはある程度の継続性があることが一般的ですが,基本的には,3ヵ月や半年,もしくは1年程度の期間での有期雇用契約であることが多いようです。また正社員とは異なり,雇用期間だけでなく,給与額や有給等の待遇の面においても個別の労働契約を結んで働くことになります。
会社ごとに違いはありますが,契約社員には退職金も認められないことが多いようです。就業規則上,退職金についての規定が正社員のみを対象としている場合が多いことがその理由です。したがって,会社側が就業規則で契約社員の退職金についても認めている場合は,契約社員であっても正社員と同じように退職金が認められると考えられます。
経歴詐称とは,従業員が会社に提出した履歴書や採用における面接に際して,学歴・職歴・犯罪歴等を隠したり,虚偽の内容の記載・申告をすることをいいます。多くの企業は経歴詐称に関して,就業規則等で懲戒事由に定めています。
学歴・職歴・犯罪歴に重大な偽りがある場合には,従業員が会社を騙したという不正があったことになり,会社と従業員との信頼関係は壊されたといえるため,懲戒解雇の事由になりえます。
また,学歴・職歴等は,会社が従業員をどのような職種に就かせるか,賃金をどうするか等の人事管理を決する大切な判断の要素となるため,この点からも経歴を詐称することは懲戒解雇の理由になりえます。
なお,試用期間中に経歴詐称をしていたことが判明した場合には,本採用の拒否の事由になりえます。この場合には,本採用後に経歴詐称が判明した場合よりも広く会社側の採用拒否(解雇)が認められる傾向にあります。
減給処分とは,職場の規律違反等に対する制裁として,本来得られるべき賃金から一定額が差し引かれる懲戒処分の一種です。
減給処分は,労働者にとって大きな不利益となりうるため,その種類・程度は就業規則に定めることとされており,使用者はその定めに従ってのみ処分を行うことができます(労働基準法89条9号)。
また,減給処分額の上限は法律で定められており,減給1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはいけません。また,減給総額が月給の10分の1を超えてもいけません(労働基準法91条)。たとえば,1日の平均賃金が1万円,月の給与総額が30万円の場合,1回の処分の限度額は5000円,処分総額の限度額は3万円ということとなります。
譴責処分(けんせきしょぶん)とは,職場の規律違反等に対する制裁として,始末書を提出させて将来を警告し自省を促すことをいいます。懲戒処分の一種であり,懲戒処分の中では最も軽い処分です。
始末書とは,規律違反行為等に対する謝罪と将来に同じ行為を繰り返さないことを誓約することを内容とする文書をいいます。懲戒処分の中では,軽い処分といえますが,これを行う場合にも就業規則の定めが必要とされます(労働基準法89条9号)。
なお,始末書を提出するよう命じたにもかかわらずこれが提出されない場合,それを理由としてさらに懲戒処分を科すことはできないとされています。始末書は,従業員の反省を表現する文書であるため,これを職務命令として強制することは,内心への不当な介入になると考えられているためです。
コアタイムとは,労働者たちが自ら仕事の開始時間と終了時間を決めることができる制度であるフレックスタイム制度において,必ず勤務しなければならない時間帯のことをいいます。
なお,コアタイムを定める場合,その開始・終了時刻を必ず定めなければなりません(労働基準法施行規則12条の3)。
たとえば,コアタイムを午前11時から午後4時までと定めた場合,労働者はこの時間帯は必ず勤務しなければなりません。いっぽう,出退勤が自由な時間帯であるフレキシブルタイムを午前8時から午後9時までと定めた場合,労働者は,この時間帯で都合のよい時間に自由に出退勤することができます。
合意解約とは,労働者による退職の申し出または使用者による退職勧奨に基づいて,労働者と使用者間の合意によって,将来に向けて労働契約の解消を図ることをいいます。合意退職ともいいます。
合意解約では,労働者も使用者も会社を辞めることについて意思が合致しているので,のちのち法律上の問題が生じることは多くありません。解雇とは異なるため,労働基準法上の解雇に対する規制を受けないのです。
これに対して,会社が一方的に労働契約を解約する場合(解雇)には,解雇に相当な理由があるかどうかという点などさまざまな法律上の問題が生じます。なお,相当な理由なく解雇することを不当解雇といい,解雇そのものが無効となります。
合意退職とは,労働者による退職の申し出または使用者による退職勧奨に基づいて,労働者と使用者間の合意によって,将来に向けて労働契約の解消を図ることをいいます。合意解約ともいいます。
合意解約では,労働者も使用者も労働契約を解約することについて意思が合致しているので,のちのち法律上の問題が生じることは多くありません。解雇とは異なるため,労働基準法上の解雇に対する規制を受けないのです。
これに対して,会社が一方的に労働契約を解約する場合(解雇)には,解雇に相当な理由があるかどうかという点などさまざまな法律上の問題が生じます。なお,相当な理由なく解雇することを不当解雇といい,解雇そのものが無効となります。
公益通報制度とは,労働者が勤務先等について一定の違法行為等が行われていることを通報する制度のことをいいます。公益通報者保護法は,公益通報を理由とする解雇等の不利益な取扱いからその労働者を保護しています。
公益通報ですから,不正な目的により通報した場合には保護の対象となりません。また,保護されるのは,一定の違法行為等についての通報に限定されており,法令に違反する事実があれば常に通報しても保護されるといった制度ではありません。
通報先は,(1)勤務先内部,(2)勤務先の事業を監督する行政庁,(3)勤務先外部で一定の違法行為等を防止するために必要な者(社外通報)の3つがあります。
(1)の勤務先内部に対する場合には,一定の違法行為等が行われていると思われる程度での通報でも保護の対象となりますが,(2)(3)の場合には,相当の理由が必要であり,(3)の社外通報ではさらに一定の要件が必要となります。
なお,通報する場合には,他人の正当な利益等を害さないようにする努力義務もあります。
降格処分は,その名の通り役職・職位・職能資格等の引き下げをする処分で,人事権の行使として行われる場合と,懲戒権の行使として行われる場合があります。
人事権の行使として行われる場合,会社にはどこの部署に誰を置くのかという人事的な裁量がありますので,労働契約の範囲内での異動であれば,基本的には裁量の範囲内といえます。もっとも,会社が権利濫用をしてはならないことはいうまでもないことですから,会社が特段の理由もなしに,たとえば故意に個人的な理由を根拠に降格処分をすることは,それが人事権の行使として行われる場合であっても,権利濫用にあたり許されないと考えられています。
また,懲戒権の行使として行われる降格処分は,懲戒処分の一種ですから,就業規則にその旨の定めが必要とされるほか,懲戒事由に照らして不当に重い処分であってはいけないとされています。
公共職業安定所とは,職業紹介業務,雇用保険関連業務,雇用対策関連業務等を行う組織です。一般的には「ハローワーク」と呼ばれています。
まず,公共職業安定所は,無職者の就職実現のために,求職者からの職業相談,求職者に対する仕事の紹介,事業者に対する人材の紹介等を行っています。求職者の希望・経験・能力等に応じた就職の実現のためにさまざまな支援を受けることができます。
また公共職業安定所は,失業認定,雇用保険の給付,不正受給に対する返還処分等,雇用保険の運用(雇用保険制度とは,労働者が失業した場合に,その生活の安定と早期再就職のために国が失業者に対して給付を行う制度のことをいいます)に関連する事務も行っています。さらには,企業に対して障害者の雇用を指導したり,子育て中の女性の勤務時間の見直しを指導する等,雇用対策関連業務も行っています。
なお,公共職業安定所は使用者と労働者間のトラブルを解決する権限は持っていません。このような問題が発生してしまった場合には,弁護士等の専門家に相談する必要があります。
コース別人事制度とは,「企画的業務や定型的業務等の業務内容や,転居を伴う転勤の有無によっていくつかのコースを設定して,コースごとに異なる配置,昇進,教育訓練等の雇用管理を行うシステム」と定義されます(旧労働省婦人局平成3年10月見解)。「総合職コース」や「一般職コース」などを設けている場合が一般的です。
このコース別人事制度は,昭和60年の男女雇用機会均等法の制定以降,男女別による賃金の格差を引き続き継続するために導入する企業が増えたといわれています。その後,男女雇用機会均等法が改正され,コース別人事制度を利用した性差別についても禁止されるようになりました。
コース別人事制度を利用した性差別とは,たとえば「総合職は賃金が高く,実際の採用は男性のみ。事務職は賃金も低く,実際の採用は女性しかしない。両者の間で仕事内容に違いはない」という状況です。このような場合,確かにコース別に待遇に違いを設けて採用をしているだけとなりますが,性差別のために「コース別」という制度を作ったと考えられ,雇用差別にあたり,男女雇用機会均等法に違反することになります。
告発行為とは,さまざまな不正・違法行為を正すために,他人のそれを申告することをいいます。特に従業員やそのほかの企業関係者が告発する場合を,内部告発といいます。
労働基準法などの一定の法令では,労働者に違反事実を申告する権利が保障されており,このような違反申告行為に対しては,事業者による解雇等の不利益な取扱いが禁止されています。また,それ以外の場合でも,公益通報制度により保護される場合があります。
とりわけ,勤務先内で秘密とされる情報を,勤務先以外の第三者に対して明らかにする方法で告発行為をした場合(社外通報)には,労働者の守秘義務等との関係で,勤務先から懲戒処分等の不利益な取扱いがなされ,紛争となることが少なくありません。
このような場合に,告発行為をした労働者が保護されるためには,(1)告発内容が真実であるか,(2)告発行為の目的が正当であるか,(3)告発のためにとった手段が目的のために必要であったか等が重要なポイントとなり,最終的には裁判所が判断することとなります。
小学校就学前の子を養育する労働者は,事業主に対して申し出ることにより,1年に5日まで,病気・ケガをした子の看護のために,休暇を取得することができます(育児休業,介護休業等育児または家族介護を行う労働者の福祉に関する法律16条の2)。
事業主は,この申し出を拒むことはできません。ただし,勤続6ヵ月未満の労働者および週の所定労働日数が2日以下の労働者に限っては,労使協定の締結により,子の看護休暇制度の対象外とすることができます。
なお,事業主は,労働者が子の看護休暇の申し出をしたことまたは取得したことを理由として,労働者に対して解雇等の不利益な取扱いをすることが禁じられています(同法16条の4,10条)。また,事業主は,育児を行う労働者が請求した場合には,1ヵ月に24時間,1年に150時間を超える時間外労働をさせてはならないとされています(同法17条)。
個別労働関係民事紛争とは,労働者個人と使用者の間の紛争です。つまり,働いている労働者一人ひとりと,雇い主や会社との間で起きるトラブルのことをいいます。反対に,労働者個人ではなく,労働組合と使用者との間の紛争は,集団的労働紛争といいます。
労働者個人は,雇い主や会社よりも立場が弱いため,以前は労働組合を作り団結して交渉していくことが想定されていました。しかし,最近では,昔に比べて労働組合の組織率が下がっているため,個別労働関係民事紛争をいかに解決していくかが大きな課題となっています。
司法の側でも,これらの問題に対応するため,個別労働関係民事紛争を対象とした「労働審判」という制度を定めました。この制度は,個別労働関係民事紛争において,訴訟よりも短期間で問題を解決できる手段として注目されています。もちろん,これまでと同じく,訴訟によって紛争の解決を図ることも可能です。
雇用形態には,いわゆる正社員のほか,契約社員,パート,アルバイトなどがあり,一般に雇用形態の変更とは,ある雇用形態から別の雇用形態に変更することをいいます。
もっとも,現実に問題となるのは,人件費削減等の理由により,正社員から契約社員やパート社員などに変更する場合(不利益な変更)だと考えられます。その場合,雇用形態は個々の労働契約で定められているため,労働者の同意がなければ,会社は一方的に不利益な変更をすることはできません。
また,労働者の同意が得られた場合には,原則として従来の契約が終了することになりますので,退職金等がある場合にはその清算も必要になります。
なお,雇用形態の変更は,労働契約内容の根本的な変更になるため,後に紛争が発生しないよう,双方が納得できるまで十分に話し合い,書面で内容を残しておくことをおすすめします。
雇用差別は,雇用に関連して差別的な取扱いをすることであり,禁止されています。
具体的には,労働基準法において,「国籍,信条又は社会的身分を理由として,賃金,労働時間その他労働条件について,差別的取扱をしてはならない。」(労働基準法3条,均等待遇),「女性であることを理由として,賃金について,男性と差別的な取扱いをしてはならない」(同法4条,男女同一賃金の原則)と定められています。
なお,社会的身分に関して,正社員・臨時社員の区別が社会的身分ではないかと訴訟になったことがありますが,ここでいう社会的身分には,契約上の地位による区別は含まれていないため,この区別によって賃金等の労働条件について差が生じたとしても,ここでいう差別にはあたらないと考えらえます。
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