労働問題に関するQ&A
解雇については、労働契約法16条において「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定められています。
今回のケースでは、まず前提として出向義務があるか、また、出向を断ったことが職務命令違反にあたるかが問題になります。
まず、出向については、現在の雇用先に籍を置いたままとはいえ、長期間にわたってほかの会社での業務に従事することとなり、勤務先の変更に伴う負担や、今後の昇進等に不利益が生じるおそれがあるため、会社からの一方的な出向命令を制限して労働者を保護する必要があると考えられています。
営業所の閉鎖等、雇用調整の必要性があったとしても、必ず出向義務が発生するわけではなく、就業規則等に出向命令についての定めがあるか、出向の条件が今回の出向を受け入れるのに十分かどうかによって、出向義務の有無が判断されます。
具体的には、密接な関係にある関連会社との日常的な出向であるかや、就業規則等で定められている出向先での賃金、労働条件、出向の期間、復帰の仕方などが、労働者に不利益とならないよう配慮されているかどうか等が考慮されます。
今回のケースでも、就業規則等における出向の定めが、労働者の利益に十分配慮していると認められない場合には、出向義務はなく、解雇事由にもなりませんので、不当解雇ということになるでしょう。
また、就業規則等の出向規定で、労働者の利益に十分配慮がなされていると認められる場合でも、出向命令に従わなかったことがただちに職務命令違反になるとは限りません。
労働契約法14条は「使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする」と定めています。
今回のケースでも、労働者が親の介護等で転居が不可能であるのに、何の配慮もなく出向を命じたというような事情がある場合には、出向命令権の濫用として、出向を拒否しても職務命令違反にはならないと考えられます。
もっとも、このような個別的な事情もない場合には、出向命令が有効となり、労働者は職務命令に違反したことになりますので、解雇が有効となる可能性があります。
さらに、今回のケースでは、会社の営業所閉鎖という事情がありますので、会社側の経営上の理由による人員整理、いわゆる整理解雇としての有効性も問題になります。
なお、一度会社を退職し子会社と雇用契約を結び直す場合を、労働法では「転籍」といいますが、その場合には、会社に籍を残している出向よりも労働者に不利益を与えるおそれが強いため、原則として労働者の個別の同意が必要とされています。
このように、出向命令を受けたとしても、必ずしもそれに応じなければならないわけではなく、またそれを断ったとしてもすぐさま解雇が認められるわけではありません。ですので、急な出向命令を受けて困ってしまった場合には、まず弁護士に相談し、対応を検討することをおすすめします。
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