サービス残業を強要される会社に不満…よくあるサビ残のケースと対処法
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サービス残業とは、一言で言えば残業代が支払われない残業のことです。昨今、世の中では働き方改革が推進され、残業時間を減らす取組みが盛んに行われていますが、依然としてサービス残業は存在するようです。サービス残業をしていることに不満を抱きながらも、「どのような対処法があるのかわからない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、客観的に見てサービス残業であるにもかかわらず、労働者自身がそれを自覚していないため、知らず知らずのうちに損をしていたという方もいらっしゃるかもしれません。
このコラムでは、どのようなケースがサービス残業にあたるのかを解説し、サービス残業への対処法をお教えします。
- 今回の記事でわかること
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サービス残業は違法
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サービス残業にあたりうるケース
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サービス残業の対処法
- 目次
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サービス残業は違法です
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サービス残業に該当する労働とは?
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タイムカードで実態と異なる時刻を記録させる
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休憩時間中に仕事をさせる
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仕事を自宅に持ち帰らせる
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会社が残業代の計算方法や制度を誤って理解している
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サービス残業を強要された・サービス残業に気付いたときの対処法
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労働基準監督署に相談する
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会社を辞めて転職する
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サービス残業した分の残業代は請求しましょう
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残業代請求に必要な証拠の集め方
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残業代請求は弁護士にご相談ください
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まとめ
サービス残業は違法です
残業とは、一般的に、1日8時間・週40時間を超えて労働することをいいます。そして、労働基準法第37条1項は、「労働者が残業・休日労働をした場合は、割増賃金(=残業代)を支払わなければならない」と定めており、会社がこれに違反した場合は、刑事罰の対象となり得ます。そのため、会社が労働者に対してサービス残業をさせたり、強要したりすることは、労働基準法に反し違法となります。
サービス残業に該当する労働とは?
サービス残業といえば、会社から、残業代は出ないけど残業をするように指示・強要されるケースが典型的です。しかし、実際には、はっきりと指示を受けていたケースだけがサービス残業ではありません。どのような労働がサービス残業にあたるのか、具体例を見ていきましょう。
タイムカードで実態と異なる時刻を記録させる
タイムカードは、労働時間を記録する手段としてもっとも一般的です。そのため、残業代請求における交渉や裁判手続のなかで、タイムカードがある場合は、原則としてタイムカードの記載どおりに労働していたものとして話が進むことが多いです。このようなタイムカードの性質を逆手にとった会社が、タイムカードに実態と異なる打刻をさせ、残業代の支払いを免れようとする悪質なケースがあります。
具体的には、以下のようなケースが典型的です。
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定時にタイムカードを打刻させて残業するように指示する
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始業時刻前に業務を行わせるにもかかわらず、始業時刻になるまでタイムカードに打刻をさせない
このようなケースで、タイムカードどおりに労働時間が認定されれば、会社はタイムカードに記録されていない労働時間分の残業代の支払いを事実上免れることになります。そのため、タイムカードに実態と異なる打刻をさせることは、サービス残業に該当するといえます。
休憩時間中に仕事をさせる
法律上、労働者には、原則として45分または1時間の休憩を取らせなければならないことが定められています(労働基準法第34条1項)。そして休憩時間は、労働者が労働から完全に解放されていなければなりません。もしも、労働者が労働から完全に解放されていない場合、休憩時間ではなく労働時間となり得ます。
たとえば、「正午から午後1時までは休憩時間だが、来客や電話があった場合は、対応しなければならない」というような状況の場合、電話や来客の頻度、休憩時間の使い方次第では、労働時間と判断される余地があります。
また、この派生形として、特にドライバー職の方にありがちなケースとして、荷待ちの時間が休憩時間として記録されていることがあります。通常、荷待ちの時間も労働時間にあたりますので、休憩時間として記録された荷待ちの時間はサービス残業と評価できます。
したがって、休憩時間の部分について残業代が支払われていなければ、残業代を請求できる可能性があります。
休憩時間中の労働については、下記のコラムも併せてご覧ください。
仕事を自宅に持ち帰らせる
仕事を自宅に持ち帰る場合や持ち帰るよう指示された場合も、適切に労働時間を管理して残業代が支払われていない限り、サービス残業に該当する可能性が高いといえます。具体的には、以下のようなケースが典型的な例として挙げられます。
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自宅で業務上必要な勉強をするよう指示された場合
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職場での残業を禁止されているものの、自宅に持ち帰って仕事をしなければ間に合わないような場合
自宅には、通常、タイムカードなどの勤怠管理はありません。そのため、オフィス内でサービス残業をする場合と比べて、証拠不十分で請求が困難になりやすく、悪質性の高いケースといえます。
会社が残業代の計算方法や制度を誤って理解している
会社が残業代を支払わないことを正当化する根拠として、以下のような主張をしてくることがあります。
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固定残業代を支払っている
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労働者が管理監督者に該当する
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変形労働時間制を採用している
もちろん、会社の主張が正しい場合もあります。しかし、一般には、固定残業代が有効であったり、労働者が管理監督者に該当したり、変形労働時間制が有効であったりするには、法律上、一定の要件を満たす必要があるにもかかわらず、要件を完璧に満たしているケースは意外と少ないものです。
固定残業代が無効である場合や、管理監督者に該当しない場合は、支払われるべき残業代の金額は増大します。そのため、会社が制度を誤って理解しているケースも、サービス残業の一種にあたるといえるでしょう。
固定残業代制と管理監督者については、以下のコラムで詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
サービス残業を強要された・サービス残業に気づいたときの対処法
上記で解説したとおり、サービス残業はさまざまな場面で発生し得るものです。では、会社からサービス残業を強要されたり、自分がサービス残業をしていることに気づいたりした場合、どのように対処すればいいのでしょうか?一般的な対処法としては、次のようなものが考えられます。
労働基準監督署に相談する
すでに述べてきたように、サービス残業は違法です。したがって、会社に、サービス残業は違法であるため、残業代を支払わないのであれば残業はできないと伝えて拒否することができます。しかし、職場での人間関係や労働環境への影響、会社からの報復をおそれてなかなか言い出しにくい方が多いのではないでしょうか。
そこで、第三者の力を借りることを考えてみてもいいかもしれません。その一つとして、労働基準監督署に相談するという選択肢があります。労働基準監督署は、労働基準法に基づいて会社の労働環境について指導・是正勧告をする権限のある公的な機関です。労働基準監督署にサービス残業の実態を相談し、労働基準監督署が、違法なサービス残業がなされていると判断すれば、会社に対して未払いの残業代を支払い、労働環境の改善に努めるように指導してくれる可能性があります。
会社を辞めて転職する
会社へ意見を伝えることや、労働基準監督署など第三者からの指導によって労働環境が改善されればよいのですが、現実には、行動を起こしてもなかなか改善されないこともあります。そこで、会社ではなく、自分の環境を変える手として、転職するというのも効果的な選択肢になります。昨今では、昔ほど転職に対する社会的なハードルは高くありません。そのため、サービス残業を強要されているのであれば、思い切って転職するという選択肢も検討すべきです。もし、会社に退職を言い出しにくいということであれば、退職代行の利用を検討してもよいでしょう。
サービス残業した分の残業代は請求しましょう
以上に挙げた対処法は、環境を変える、あるいは環境から逃げるという対処法でした。このほか、サービス残業に対するもう一つの対処法として、残業代の支払いを会社に求めるという方法があります。サービス残業とは、すでに解説したとおり、残業代の支払われていない残業です。つまり、サービス残業をしているということは、未払いの残業代があるということにほかなりません。労働者が、労働に見合った対価を請求するのは当然の権利です。したがって、サービス残業をしている方は、環境を変えることと併せて残業代の請求も検討しましょう。
残業代請求に必要な証拠の集め方
残業代を請求する場合、基本的には労働者側が労働時間や残業代の金額を主張・証明しなければなりません。しかしながら、一般にサービス残業の場合、すでに解説したように、タイムカードなどの勤怠管理の記録が不十分なケースも多いです。そのため、労働時間がきっちりと記録されているケースと比べて、証拠を収集することの重要性が高まります。
タイムカード以外であっても、たとえばパソコンのログやビルの入退館記録など、労働時間を間接的に示せる資料があれば、サービス残業の時間を証明できる可能性があります。
以下のコラムでは、具体的な証拠の収集方法を解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
残業代請求は弁護士にご相談ください
残業代を請求するには、集めた証拠から残業代を計算し、会社と交渉します。しかしながら、残業代の計算は、1日1日の労働時間を細かく計算することに加え、固定残業代の有効性など専門的な争点が絡むケースも多いため、1人で適切に対応するのはとても大変です。弁護士に相談すれば、サービス残業のケースで重要となる証拠の収集や、複雑な計算、さまざまな争点についても適切に見通しを立てて交渉することができます。残業代請求をする場合は、弁護士を活用するのが一番です。
まとめ
サービス残業は明確に違法ですから、違法な労働を受け入れるべきではありません。サービス残業に対しては、会社の環境を変えたり、会社から逃げたりするという対処法もあります。当事務所では、会社に対して、支払われるべき残業代を支払わせることで、サービス残業をさせる会社に対抗するお手伝いをしています。アディーレなら、残業代請求に関する相談は何度でも無料です。ご自身の残業がサービス残業なのか、サービス残業であるとして残業代を請求できるのか、弁護士がご事情を伺います。サービス残業にお困りの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度お話をお聞かせください。
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※現在アディーレでは、残業代請求を含む労働トラブルと、退職代行のみご相談・ご依頼をお引き受けしております。 残業代請求と退職代行に関するご相談は何度でも無料ですので、お気軽にお問合せください。
監修者情報
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資格
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弁護士、行政書士、ファイナンシャルプランナー検定2級、E資格
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所属
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東京弁護士会
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出身大学
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東京大学法学部
私は、困っている人に対して、法律という武器を駆使して手を差しのべたいと思い、弁護士になりました。しかし、いまだ弁護士へ相談する心理的・経済的なハードルは存在し、結果として泣き寝入りしているケースもまだまだ多いのではないかと思います。そのような状況を変えるべく、事務所として施策を進めることはもちろん、私個人としても「この人に頼めば安心だ」と思っていただけるよう質の高い仕事をし、安心してご依頼いただける弁護士になりたいです。これから、日々邁進していく所存です。