退職代行とは
退職代行とは、労働者に代わって業者が会社に退職の意思を伝え、退職の手続を行うサービスです。
民法上、原則として、退職は労働者からの意思表示のみで自由に行うことができ、会社の承諾は不要です。しかし、実際に退職する際はさまざまな問題に直面することがあります。退職代行サービスは、こうした問題を解消し、スムーズな退職をサポートします。
退職代行は、適切に利用すればとても有用なサービスです。ただし、退職代行業者の選択には注意が必要です。安心して退職を進めるために、弁護士が運営する業者を選ぶことが望ましいでしょう。
退職代行を使うメリット
退職代行サービスの最大のメリットは、退職に伴うストレスと負担を大幅に軽減できることです。具体的には、以下のようなメリットがあります。
退職を言い出す緊張から解放される
多くの人にとって、上司や人事部門に退職の意思を伝えることは大きなストレスです。
「上司が怖くて緊張してしまう…」「退職理由を説明するのが面倒くさい…」など、さまざまな心理的障壁があるのではないでしょうか。
法律上、労働者には退職の自由が認められていますが、実際に退職を申し出るのは心理的に難しいものです。
退職代行サービスは、この心理的障壁を取り除き、スムーズな退職を可能にします。
会社からの嫌がらせや引き止めを防げる
退職を申し出たあと、会社から嫌がらせを受けたり、しつこく引き止められたりするケースがあります。
上述のように、法律上は労働者が自由に退職できると定められているものの、実際には会社がこれを妨げる行為におよび、退職を断念させようとすることがあるのです。
退職代行サービスを利用すれば、会社との連絡を任せることができるため、こうしたトラブルを回避できる可能性があります。
たとえば、退職届の受理を拒否されるケースでも、内容証明郵便で退職の意思表示を行うなどの対応を取ることができます。
スムーズに退職の手続が終わる
民法第627条第1項により、期間の定めのない雇用契約の場合、退職の申し出から2週間経過すれば退職できると定められていますが、実際にはさまざまな手続が必要です。
退職代行サービスを利用すれば、退職に関する手続を迅速かつスムーズに進めることができます。
また、弁護士による退職代行であれば、未払い残業代の請求など、退職に付随する問題にも対応してもらえる場合があります。
退職代行の使い方4つのステップ
退職代行は、典型的には以下の4つのステップで進みます。各ステップで注意すべき法的ポイントも押さえておきましょう。
相談する
多くの退職代行サービスでは、まず無料相談を行います。
この段階で、自分の状況に退職代行サービスが適しているか、どのようなサポートが受けられるかを確認できます。
労働問題に詳しい弁護士による退職代行であれば、専門知識に基づいた法的なアドバイスも得られます。
相談の際は、退職理由や希望する退職日など、具体的な要望を明確に伝えましょう。
必須ではありませんが、労働契約の内容や就業規則など、詳細な情報を準備し、自分の状況を詳しく伝えられるとより理想的です。
契約する
相談したうえで依頼することに決めた場合には、契約を締結します。
料金の支払いに関しては、前払いが一般的ですが、成功報酬制を採用している退職代行サービスもあります。
料金は業者やサービス内容によって大きく異なり、数万円から十数万円まで幅広いため、事前に十分な確認が必要です。
また、一見とても安い業者でも、「サービスの範囲が限られていた」、「有資格者のアドバイスをまったく受けられなかった」、「有資格者しか行えないはずのサービスを提供する違法な業者だった」、などの落とし穴があるため注意してください。
代行業者が会社に連絡する
退職代行業者が会社に連絡し、退職の意思を伝えます。この段階では、労働者本人が直接会社とやり取りする必要はありません。代行業者が代わりに会社とやり取りをしてくれます。
退職に関する交渉を進め、退職日を迎える
弁護士による退職代行であれば、退職の意思を伝えるだけでなく、有給休暇の消化などについても法律に則って交渉をしてくれます。
「引継ぎをしてほしい」、「○○の費用を支払ってほしい」など、会社から要求を受けることもありますが、これらに対しても法的根拠に基づいて的確に反論していくことが可能です。
退職代行の利用を検討すべき3つの場面
退職代行サービスは、以下のような場面で特に有効です。
上司と直接話すのが怖いとき
パワーハラスメントや過度なプレッシャーを受けている場合など、上司と直接話すことに恐怖を感じる方は、退職代行サービスの利用を検討しましょう。
労働施策総合推進法により、使用者にはパワーハラスメント防止措置が義務付けられていますが、ご存知のとおり、実際にはまだ多くの職場でパワハラが存在します。退職代行サービスを利用すれば、こうした状況から安全に脱出できる可能性が高まります。
会社から賠償請求などを受けそうなとき
「退職するなら、お前の採用や研修にかかった費用分の損害賠償を請求する!」など、退職をしようとすると、労働者を引き留めるため、金銭的な請求を示唆して脅してくる会社もあります。
退職代行サービスを利用すれば、会社の請求に本当に応じなければならないのか、それとも法的に理由の無い請求にすぎないのかなどのアドバイスを受けつつ、的確に対応してもらえます。
会社が辞めさせてくれないとき
退職の意思を伝えても、会社が手続を進めてくれない場合があります。
特に、入社して間もない方などは、上司に今後の対応をはぐらかされたりして、退職をすぐに受け入れてもらえないケースもあるでしょう。
このように、会社が退職の話に取り合ってくれない場合には、退職代行の力を借りるのも1つの手段です。
退職代行を使うときの注意点
退職代行サービスを利用する際は、以下の点に注意しましょう。
料金とサービス範囲をしっかり確認する
退職代行サービスの料金は業者によって大きく異なります。
一般的に数万円から十数万円程度ですが、料金体系(固定料金か成功報酬制か)や追加料金の有無をしっかり確認しましょう。
また、解約条件なども把握することが重要です。
他方、いくら安くても、サービス範囲が希望していた内容よりも狭ければ意味がありません。退職の意思表示だけなのか、交渉まで対応できるのかなど、必ず料金とセットで確認してください。
信頼できる業者を選ぶ
退職代行を依頼するときは、信頼できる業者を選ぶことが重要です。
弁護士法に違反するリスクなく交渉を行なってくれる、法律事務所が運営しているサービスを選びましょう。「弁護士監修」などと謳って、まるで弁護士が直接会社と交渉してくれるかのようにアピールしている業者もありますが、法律事務所とはまったく異なります。
このような業者も、結局は一般的な会社と同じであって、交渉を代理することはできないため気をつけましょう。
口コミに見せかけた広告には要注意
最近では、「退職代行」で検索すると、各業者の口コミを挙げたり、点数をつけたりして比較しているサイトが多く見つかります。また、SNSでは「○○の退職代行サービスを使ったらすぐ退職できた!」といった投稿もあります。
しかし、これらをよく見ると、隅に小さな文字で「PR」と書いてあった…というものが少なくありません。公平な比較サイトや利用者の体験談のようなスタイルを使いながら、特定の業者を宣伝する広告だったのです。「評価が高い業者だから安心!」とすぐに鵜呑みにせず、よく吟味して業者を選びましょう。
弁護士に退職代行を頼むメリット
弁護士はさまざまな法的知識を有しています。労働問題の知識や経験が豊富な弁護士なら、労働基準法や労働契約法、民法などに基づいて、適切に退職交渉を進めてくれます。
たとえば、未払い残業代の請求や退職金の計算など、複雑な法的問題も追加で依頼したいという場合にも対応できます(ただし、退職代行サービスとは別に料金が発生するものもあります)。
また、退職しようとする労働者に対して「退職するなら、お前の採用や研修にかかった費用分の損害賠償請求をする!」など、会社が引留め目的で金銭などを請求してくる場合もあります。
弁護士による退職代行サービスなら、これらの請求を受けたとしても的確に反論することができますし、そもそも、会社から無謀な請求を受けるリスクも減らせるでしょう。
さらに、競業避止義務や秘密保持義務など、退職後の行動に関する注意点のアドバイスも受けられるため、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。
退職代行を使ったあとの仕事探しへの影響
退職代行サービスを利用したあとの仕事探しへの影響は、一般的には限定的です。
ただし、同業他社への転職を考えている場合は注意が必要です。ケースバイケースではありますが、退職代行サービスを利用したことで前職との関係が悪化し、業界内での評判に影響する可能性があります。
一方で、退職代行サービスを利用することで、精神的なストレスを軽減し、次の仕事探しに集中できるというメリットもあります。
まとめ:退職代行で安心して退職を
退職代行サービスは、退職に伴うストレスや負担を大幅に軽減し、安心して退職できる有効な手段です。
特に、上司との対話が怖いという場合や退職の意思を伝えても会社が取り合ってくれない場合に役立ちます。
法律上、退職は原則として労働者が自由に申し入れることができますが、実際には一人で退職を実現するのが難しい場面も少なくありません。自分で退職の話をするのがつらいと思ったら、退職代行サービスの利用を検討してみましょう。新しいキャリアへの扉を開く第一歩になるかもしれません。
ただし、その際は、信頼できる退職代行サービスを選ぶことが重要です。
退職に関する不安や疑問がある方は、労働問題に精通した弁護士が在籍するアディーレ法律事務所への無料相談をおすすめします。
経験豊富な弁護士が、あなたの状況に合わせた適切なアドバイスを提供いたします。
監修者情報
-
資格
-
弁護士
-
所属
-
東京弁護士会
-
出身大学
-
東京大学法学部、東京大学法科大学院
裁判に関するニュースに寄せられた、SNS上のコメントなどを見るにつけ、法律家が法的な思考をもとに下した判断と、多くの社会一般の方々が抱く考えとのギャップを痛感させられます。残念でならないのは、このようなギャップを「一般人の無知」と一笑に付すだけで、根本的な啓発もなく放置したり、それを利用していたずらに危機感を煽ったりするだけの法律家が未だにいることです。法の専門家として、専門知を独占するのではなく、広く一般の方々が気軽に相談し、納得して、法的解決手段を手に取ることができるよう、全力でサポートいたします。