退職代行とは?会社を辞める手続を代わりにしてくれるサービス
退職代行とは、あなたの代わりに会社に「辞めます」と伝え、必要な手続をしてくれるサービスです。最近、ブラック企業や職場のストレスなどを理由に利用する方が増えて、注目を集めています。このサービスを使えば、直接上司や人事部門と話さずに会社を辞められるので、精神的な負担が減ります。
日本では、働く人には仕事を自由に選ぶ権利があります。そして、会社を辞める自由もあるのです。退職代行サービスは、この権利に基づいて退職するのを手伝ってくれます。
退職代行が必要になる主な状況
退職代行サービスが役立つのは、以下のような場面です。それぞれの状況について詳しく見ていきましょう。
会社が退職を認めてくれない場合
「辞めたい」と言っても、会社が認めてくれないことがあります。
たとえば、「辞めたい」と言ったのに、人事部から「今は忙しいから」と数ヵ月もの間、引き留められているような場合です。
しかし、一般的な無期雇用契約の場合、法的には、労働者が「辞めます」と申入れさえすれば、会社がいくら引き留めたり、「退職は認めない」と反発したりしても、2週間が経過すれば退職することができます(民法第627条1項)。このようなケースでは、退職代行サービスが会社との間で法律に基づいた交渉をしてくれて、スムーズに辞められるよう手伝ってくれます。
直接会って退職を伝えるのが難しい場合
人と話すのが苦手な方や、退職を伝えるときの緊張や不安が強い方にとって、退職代行サービスはよい選択肢になります。
たとえば、上司からのいじめ・パワハラや不当な扱いを受けている人にとって、直接「辞めます」と言うのは大きなストレスです。上司と直接話すのがとても怖いと感じる場合などに退職代行サービスを使えば、精神的な負担を減らせます。
退職代行サービスの種類と特徴
退職代行サービスには主に2種類あります。それぞれの特徴を理解して、自分に合ったサービスを選びましょう。
一般的な退職代行業者は比較的安価ですが、法律的な交渉や労働問題への対応はできません。
一方、弁護士のサービスは一般の業者より高い場合が多いものの、会社が退職に反発しそうな場合や、労働問題・法律的なリスクがある場合に特に役立ちます。労働法だけでなく、さまざまな法分野の知識に基づいた専門的なサポートを受けられるので、より安全に退職できます。
退職代行サービスの仕組みと利用の流れ
退職代行サービスの使い方を理解することは、スムーズに会社を辞めるために大切です。以下では、基本的な仕組みと具体的な利用手順を説明します。
退職代行サービスの基本的な仕組み
退職代行サービスの基本的な仕組みは、辞めたい人(依頼者の方)と退職代行業者が契約を結び、業者が依頼者の方の代わりに会社とやり取り(ただし、法律事務所以外の業者の場合は、一方的な通知・伝達のみ)をするというものです。これにより、依頼者の方は直接会社と話さずに退職の手続を進められます。
退職代行サービスの一般的な手順
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弁護士または退職代行業者に相談する
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いつ辞めたいかなど、詳しい内容を打ち合わせて依頼する
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契約を結んでお金を支払う
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法律事務所または退職代行業者が会社に連絡する
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必要な書類を準備して提出する
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法律事務所以外の業者による退職代行の場合は、会社に連絡した結果報告を受け、サービスが終了する。法律事務所による退職代行の場合は、退職日までの有休消化などについても交渉する
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法律事務所による退職代行の場合は、退職日をもってサービスが終了する
先ほど説明したとおり、無期雇用の場合、退職の申入れから2週間で退職することができます(民法第627条第1項)。これを前提にすると、退職代行業者が会社に連絡してから実際に辞めるまでは、長くとも2週間となり、相談から退職までで考えるとおおよそ2週間強かかります。
もっとも、できるだけ早く辞めたいという意向に対して、会社も2週間以内の退職で問題ないと合意した場合には、上記よりも短い期間で退職できることもあります。一方で、残っている有休が2週間分以上あり、これを全て使い切って退職したいという場合には、退職までの期間はその分長くなります。
弁護士に退職代行を頼むメリット
弁護士に退職代行を頼むと、いくつかの大きなメリットがあります。以下では、その主な利点について詳しく説明します。
法律に基づいて交渉できる
法律をよく知っている弁護士であれば、法的な観点から退職の手続を進められます。労働基準法や労働契約法、民法などの法律に基づいた適切なアドバイスをもらえるので、法的なトラブルになるリスクを減らせます。
たとえば、「急に辞めて会社に損害を与えた」などとして、会社から損害賠償請求される可能性もあります。しかし、このような損害賠償請求が、裁判で実際に認められるケースは極めて稀です。
弁護士であれば、このような裁判例の知識に基づいて会社の請求に反論できますし、そもそも、「弁護士が付いていれば、無謀な請求をしてもメリットが無い」と会社に考えさせることで、請求を受ける可能性自体を減らすこともできるでしょう。
有利な条件で退職できる可能性が高まる
弁護士は専門的な知識と経験を活かして、退職金や未払いの残業代などの交渉を有利に進められます。労働者の権利を守りながら、よりよい条件で退職できる可能性が高くなります。
安全に退職できる
弁護士には依頼者の方の利益を守る義務があるので、依頼者の方の意思に基づき、依頼者に有利になるよう交渉などを進め、依頼者の方を守ってくれます。
また、弁護士には秘密を守る義務があるので、弁護士から個人情報や退職の詳細が漏れる心配もありません。
退職代行サービスの料金と選び方
退職代行サービスの費用は業者によって違うため、選ぶときは注意が必要です。以下では、料金の目安と信頼できるサービスの選び方について説明します。
退職代行サービスの料金例
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※これらは参考例です。実際の料金は各業者や弁護士によって異なります。
信頼できる退職代行サービスを選ぶ4つのポイント
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有資格者が対応してくれるか確認する
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料金の内訳がはっきりしているか確認する
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どのような範囲まで対応してくれるか確認する
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連絡が取りやすいか確認する
退職代行サービスを選ぶときは、法律に違反していないサービスかどうかを確認することが大切です。
また、弁護士資格を持った専門家が対応しているサービスを選ぶと、より安全確実に退職できる可能性が高くなります。
資格を持っていない人が弁護士の仕事をすることは法律で禁止されているので、サービスの内容が適切かどうかよく確認する必要があります。
退職代行サービスを使う際の注意点
退職代行サービスを使うときは、いくつか注意すべきポイントがあります。以下では、主な注意点について詳しく説明します。
会社からの直接連絡には自分で対応しない
退職代行サービスを使うと、会社の担当者が直接連絡してきたりする可能性があります。こんな場合は、退職代行業者を通じて対応することが大切です。
秘密情報の扱いや競業避止義務に注意する
退職代行サービスを使うときは、会社の秘密情報の扱いや競業避止義務(辞めたあとすぐに競合他社で働かない義務のこと)などには気をつける必要があります。
退職代行サービスを使ったことだけで懲戒解雇の理由にはなりませんが、会社の秘密情報を漏らしたり、競業避止義務に違反したりするなど、別の理由で懲戒解雇になるリスクはあります。これらの行為を避けて、適切に退職の手続を進めることが大切です。
退職代行サービスについてよくある疑問
退職代行サービスについては、いろいろな疑問が寄せられています。ここでは、特によくある質問とその回答を紹介します。
- 退職代行サービスは違法ではないの?
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業者の行う退職代行サービス自体は違法ではありません。
ただし、サービスの内容によっては弁護士法に違反する可能性があります。
たとえば、弁護士資格を持っていない人が有償で法律相談や労働条件の交渉をすることは違法になり、その人に相談・依頼した方もトラブルに巻き込まれる可能性があります。法律に違反していないサービスを選ぶことが大切です。
- 退職後の転職活動に影響はある?
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退職代行サービスを使ったこと自体が転職活動に直接影響することはありません。
ただし、辞め方や前の会社との関係が、将来の転職のときの評価に影響する可能性はあります。そのため、できるだけ円満に辞めるよう心がけることをおすすめします。
まとめ
退職代行サービスは、職場でのストレスや不安から解放されたい人にとって役立つ選択肢です。
ただし、使うときは法律的なリスクや会社との関係に注意が必要です。信頼できる弁護士を選び、できるだけ円満に辞めることが大切です。
また、弁護士による退職代行サービスを使えば、より安全に退職できる可能性が高くなります。
新しい人生や仕事を始めたい方は、ぜひ退職代行サービスの利用を検討してみてください。自分に合ったサービスを選んで、スムーズに退職しましょう。
退職に関する悩みや不安がある方は、アディーレ法律事務所に相談してみてください。
経験豊富な弁護士が、あなたの状況に合わせた最適な解決方法を提案します。