退職したらまずはハローワークへ!失業保険の申請手続について解説
公開日:
更新日:
「退職することは決まったけど、再就職先が決まっていない」
「再就職先からの給料が出るまでの生活費に不安がある」
そんなとき、頼りになるのが失業保険です。失業保険は、在職中に給料からの天引きで雇用保険料を納めておき、いざ失業したときに、失業手当(お金)をもらえるという制度で、正確には、「雇用保険」から「基本手当」を受給する手続となります。
では、実際に退職した際、失業手当をもらうにはどうすればよいのでしょうか?
本コラムでは、失業保険の手続方法や失業手当がもらえる期間、また離職票がない場合の対処法について解説しています。ぜひ最後までご覧ください。
- 今回の記事でわかること
-
-
失業保険をもらえる条件や手続方法
-
離職票が手元にないときの対処法
- 目次
-
-
ハローワークで失業保険がもらえる条件
-
退職した会社が雇用保険の適用事業である
-
雇用保険の被保険者である
-
雇用保険加入期間が通算12カ月以上ある
-
失業状態でハローワークに求職を申し込んでいる
-
退職後ハローワークで失業保険をもらうための手続
-
失業保険の申請に必要なもの
-
失業保険の申請の流れ
-
退職後すぐにハローワークに行かなきゃダメ?
-
失業手当はいつからどれくらいの期間もらえる?
-
受給開始日
-
給付日数
-
離職票がないときは?
-
離職票はどうやって手に入れる?
-
会社が離職票を出してくれない場合
-
雇用保険に加入していなかった場合
-
まとめ
ハローワークで失業手当がもらえる条件
では、失業保険によって失業手当をもらうために、何か条件はあるのでしょうか?大きく分けて以下の4つとなりますので、順番に解説していきます。
退職した会社が雇用保険の適用事業である
1つ目の条件は、退職した会社が雇用保険の適用事業であることです。なかには、使用者が会社以外の法人や個人事業主という場合もあるでしょう。しかし本コラムでは、わかりやすいように会社と記載します。
労働者を1人でも雇っていれば、会社も法人も個人事業主も、雇用保険の適用事業となり、条件を満たす労働者を雇用保険に加入させないといけません。そのため、この条件はほとんどの場合に当てはまると思います。
ただし、労働者が常時5人未満の個人経営の事業について、以下の業種は、雇用保険の加入は任意でよいとされ(雇用保険法附則第2条1項)未加入の場合があるので、該当の会社に勤務していた方は注意しましょう。
-
土地の耕作もしくは開墾または植物の栽植、栽培、採取もしくは伐採の事業その他農林の事業
-
動物の飼育または水産動植物の採捕もしくは養殖の事業その他畜産、養蚕または水産の事業(船員が雇用される事業を除く)
雇用保険の被保険者である
次に、退職した会社での雇用条件が、「継続して31日以上の雇用が見込まれ、かつ、1週間の所定労働時間が20時間以上」という内容を満たしている必要があります。この条件を満たす労働者は、雇用保険の被保険者となるため、会社は雇用保険の加入手続をしなければならないのです。
ただし、季節雇用者の一部、学校の学生または生徒の一部、漁船の乗組員等は、被保険者とならないため(雇用保険法第6条1項)、該当しそうな方は、自分が被保険者にあたるかハローワークに確認してください。
雇用保険加入期間が通算12ヵ月以上ある
また離職日以前の2年間で、雇用保険に加入していた期間が通算して満12ヵ月以上必要です。このとき1ヵ月とカウントされるのは、離職日から1ヵ月ごとに区切った期間に、賃金支払いの基礎となった日数が「11日以上」ある月、または、賃金支払の基礎となった労働時間数が「80時間以上」ある月なので、たとえば体調不良で何日も欠勤していた方などは注意してください。
なお、倒産や解雇などで退職した場合や、自己都合退職であっても、出産・育児や介護等により離職した人については、離職日以前1年間に、加入していた月が満6ヵ月以上あれば受給資格を得られます。
失業状態でハローワークに求職を申し込んでいる
最後は、失業状態でハローワークに求職の申込をする必要があります。
では、その「失業状態」とは何でしょうか。具体的には以下のような状態にあることを指します。
-
就職を希望している
-
就職できる状態にある(就職の能力がある)
-
積極的に就職活動をしている
そもそも就職を希望しておらず、退職後に働く意思がない場合には、失業保険を受け取ることができません。
健康状態が悪化しており、すぐに就職できる能力がない場合や、就職の意思と能力があっても、まったく就職活動をしていない場合も同様です。
退職後ハローワークで失業保険をもらうための手続
以上、説明した条件を自分が満たしていると確認できたら、次は失業手当をもらう手続をしていきましょう。
失業手当は、退職すれば自動的に振り込まれるものではありません。労働者自身がハローワークに行って、申請手続をする必要があります。
なお、失業保険は自分の住居を管轄するハローワークでしか申請できませんので注意してください。もしわからない場合は、インターネットで調べるなどして場所を確認します。管轄のハローワークがわかったら、いよいよ手続開始です。申請に必要なものや具体的な流れなどを見ていきましょう。
失業保険の申請に必要なもの
まず、申請に必要なものは以下のとおりです。
-
雇用保険被保険者離職票
-
個人番号が確認できる書類(マイナンバーカードや通知カードなど)
-
身元確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
-
写真2枚(最近の写真、正面上半身、縦3.0cm×横2.4cm)
-
印鑑
-
本人名義の預金通帳やキャッシュカード
もしかすると、雇用保険被保険者離職票(以下、「離職票」といいます)が手元にないという方がいらっしゃるかもしれません。会社からもらっていないという方は、何らかの理由で発行が滞っている可能性がありますので、その点についてはあとで解説したいと思います。
失業保険の申請の流れ
失業保険の申請から手当の受取りまでの流れは、基本的に以下のようになります。
-
ハローワークで失業保険の申請(離職票の提出や求職の申込)を行う
-
受給資格の確認が行われ、雇用保険説明会の日程が指定される
-
②から通算7日間の「待期期間(受給開始までの待ち時間)」を経て、雇用保険説明会に出席する
-
「雇用保険受給資格者証」「失業認定申告書」が渡され、第一回目の「失業認定日」が決定する
-
失業認定日にハローワークに行き、失業認定を受ける。会社都合の場合は、失業認定から3~7日後(自己都合の場合は、給付制限期間が明けた2回目の失業認定後)、指定した金融機関の預金口座に基本手当が振り込まれる
-
原則として4週間に1度、指定された日に管轄のハローワークに行って、求職活動の状況などを報告し、条件を満たせば再度失業認定を受ける
-
再就職をする、または給付期限が終わるまで⑤⑥を繰り返す
退職後すぐにハローワークに行かなきゃダメ?
離職票などの必要書類が揃ったら、できるだけ早くハローワークに行って、手続を行うようにしましょう。
というのも、失業保険の申請が遅れると、失業手当の受給開始日が遅くなったり、トータルでもらえる金額が減ったりと、受給者にとってデメリットしかないためです。
失業手当はいつからどれくらいの期間もらえる?
ハローワークで失業保険の申請を行い、失業認定を受けたら、いよいよ失業手当の受給が始まります。
しかし、退職理由によっては、受給開始日や受給できる日数が異なってきます。トータルでもらえる金額も変わってくるのでしっかり確認していきましょう。
-
- 受給開始日
-
退職理由には「会社都合」と「自己都合」があります。
「自己都合」は、労働者が自ら希望して退職する場合です。自己都合の場合、7日間の待機期間後、更に2ヵ月間の給付制限期間が設けられているため、退職後すぐ失業手当を受けることはできません。一方、「会社都合」は、解雇や、退職勧奨を受けての退職等、会社側の都合により退職する場合です。会社都合の場合、給付制限期間はないので、7日間の待機期間後、失業認定を受けて、失業手当を受けることができます。
退職理由については、離職票に記載があるので、実際の退職理由と離職票に記載された退職理由があっているか確認しましょう。
-
- 給付日数
-
退職理由と被保険者期間をもとにして、失業保険の受給期間が決定されます。
詳細は以下の表のとおりです。
離職票がないときは?
手続の説明に出てきた離職票ですが、なかには手元にないという方がいらっしゃるかもしれません。「離職票がないと、失業保険の手続ができないのでは?」と思われるでしょうが、ハローワークに行くことで解決する場合があります。
ここでは、離職票が手元にないときの対処法をご紹介します。
離職票はどうやって手に入れる?
離職票は、退職の際、会社が労働者に交付する書類で、正式名称を「雇用保険被保険者離職票」といいます。
労働者から言わなくても、退職すると離職票を用意してくれる会社もあります。一方、再就職先が決まっていて失業手当を受給しないなど、離職票が不要な人もいるため、労働者の申し出があって始めて離職票を準備する会社もあるので、退職の際は、労働者から会社に対して離職票を交付するよう求めましょう。
離職票の作成には、会社が一度ハローワークに書類を提出するという工程を挟むため、労働者の退職後に郵送等で送られてくることも多いです。退職後2週間経っても離職票が届かなければ、遅れている可能性が高いので、会社に確認しましょう。
会社が離職票を出してくれない場合
離職票の発行が遅れている場合、ハローワークから会社に、離職票の作成状況の確認や交付を促すよう連絡してもらえないか相談しましょう。
またハローワークでは、退職の翌日から12日以上経過していれば、失業保険の仮手続を行うこともできます。仮手続きを行った場合、認定日までに離職票を提出すれば、失業手当の開始が遅くなるのを防げるので、離職票の発行が遅れている方はこの仮手続だけでもしておくといいでしょう。
雇用保険に加入していなかった場合
退職後、実は雇用保険に加入していないことが発覚したというケースもあります。
会社やハローワークに確認したほうが確実ですが、自分が雇用保険に加入しているかどうかは、給与明細を確認するとわかります。給与明細の「控除」欄に「雇用保険料」との記載があって、毎月いくらか(数百円~千数百円程度が多い)が差し引かれていれば、雇用保険に加入していると思ってよいです。
本来雇用保険に加入させなければならない労働者について、会社が手続をしていなかったというケースでは、遡って2年間までは加入手続をすることができます(雇用保険法第74条)。
また給与明細上、雇用保険料が差し引かれているのに、実際には雇用保険に加入していなかったという悪質なケースだと、2年を超えた部分も加入手続をすることができます(雇用保険法第22条5項)。
どちらのケースも、雇用保険に入ってなかったからといって諦めず、ハローワークに相談へ行きましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
本コラムでは、退職したときにハローワークで行う失業保険の手続や、失業手当の受給期間などについて解説しました。
いざ退職しようと思っても、再就職は決まるのか、その間の生活費はどうするのかなど、さまざまな不安があるかと思います。
しかし、令和2年10月からは、自己都合退職による失業手当の給付制限期間が、3ヵ月から2ヵ月に短縮されるなど、労働者にとって有利な法改正も徐々に行われてきています。
今回説明した失業保険をはじめ、さまざまな制度を知ることで、安心して過ごせる日々が訪れるはずです。一人で悩んだりせず、まずはお近くのハローワークに相談してみてください。
監修者情報
-
資格
-
弁護士、2級知的財産管理技能士、2級FP技能士、宅地建物取引士(有資格)、JADP認定 夫婦カウンセラー
-
所属
-
東京弁護士会
-
出身大学
-
中央大学法学部,大阪大学大学院高等司法研究科
弁護士は敷居が高いし,なんだか怖そう。以前は私もこのようなイメージを持っており,困っている方が気軽に相談でき,寄り添える弁護士になりたいと思いました。知らない間にトラブルに巻き込まれていたり,後悔するようなことをしてしまったり,そんな人は意外にたくさんいます。勇気を持って,ぜひ1度ご相談ください。難しいことばを使う必要はありません。上手に話そうとする必要もありません。あなたの置かれた状況や胸につかえた気持ちを,あなた自身のことばで聞かせてください。未来のあなたが笑顔でいられるように,今何をすべきか,一緒に考えさせてください。