強引な退職の引き止めは法的にどうなの?退職できるケースを弁護士が解説
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退職にあたり、以下のようなお悩みを抱える方が多くいらっしゃいます。
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勤務先に退職を申し入れたが、「今は繁忙期だから退職しないでくれ」と言われた
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上司に退職届を渡したが「預かっておく」と言われただけで、一向に退職できない
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勤務先に退職の意思を伝えたが、「半年後でないと退職は認められない」と言われた
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勤務先に退職の申入れをしたところ、「損害賠償請求する」と言われた
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勤務先の社長から借入があり、「これを返済し終わるまでは退職を認めない」と言われた
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転職先が決まっており、早く転職先での就業を開始したいが、現在の勤務先が退職を認めてくれない
本コラムでは、退職の引き止めは法的に許されるのかや、退職の引き止めをされても退職できるケースについてお伝えします。加えて、勤務先から強く引き止められた際、退職代行を弁護士に依頼するとどのようなことが実現できるのかなどについても併せて解説いたします。
- 今回の記事でわかること
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無期契約の場合、法律上、退職申入れから2週間経過すれば退職できる
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有期契約の場合、法律上の要件を満たせば途中退職できる
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有期契約の場合、弁護士に依頼すれば、合意退職が成立するケースがほとんど
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退職代行を弁護士に依頼するメリット
- 目次
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強引な退職の引き止めは法的に許される?
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退職の引き止めが許される範囲
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雇用の期間が決まっていない無期契約の退職引き止めについて
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無期契約であれば、原則2週間で一方的に退職できる
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退職の予告期間が定められていたら
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雇用の期間が決まっている有期契約の退職引き止めについて
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やむを得ない事由や労働条件の相違がある場合は退職できる
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契約の途中で辞めたくなったら
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退職代行を弁護士に依頼するメリット
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無期契約で退職を引き止められている場合
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有期契約で退職を引き止められている場合
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まとめ
強引な退職の引き止めは法的に許される?
退職の引き止めが許される範囲
会社が従業員の退職を引き止めることは、まったく許されないわけではありません。
これまで働いてくれていた従業員が退職するとなると、会社としてはその穴埋めが必要となります。新たに人を採用しなければならないでしょうし、すぐに採用できない場合は、ほかの従業員の負担が増える可能性もあります。もし、従業員から退職希望があった場合、会社として一度は退職を引き止めたいという心理が働くのが通常であると考えられます。
また、たとえば直属の上司に退職の申入れをした場合、その上司自身が会社から自らの管理能力を問われることをおそれ、いわば自分の保身のために、退職を引き止めてくるというような場合もありえます。
このようなことから、従業員が退職を申し出てきた場合に、一定程度、退職を引き止めることは許されます。
ところが、一定の範囲を超えて、強引に退職を引き止めてはいけません。たとえば、何の説明もなく退職を引き延ばしたり、合理的な理由がないにもかかわらず「半年後でないと退職は認められない」と伝えて退職を拒否したり、会社から借入をしている従業員に対して「借金を返すまで退職は認めない」として退職を引き止めたりすることは、法的に許されません。
雇用の期間が決まっていない無期契約の退職引き止めについて
無期契約であれば、原則2週間で一方的に退職できる
民法第627条1項では、無期契約の退職について、「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。」と規定されています。
つまり、雇用の期間が決まっていない場合は、「退職を申し入れてから2週間が経過すると退職できる」のです。正社員の方のほとんどが、雇用の期間を定めない無期契約だと思われますので、この無期契約の場合は、退職の申入れをしてから2週間が経過すれば、“勤務先の同意がなくても”一方的に退職することができるのです。たとえ勤務先が、「半年後でないと退職は認められない」、「会社から借りているお金をすべて返すまで退職はできない」と言って退職を引き止めてきても、退職申入れ後から2週間が経過すれば退職できるということになります。
退職の予告期間が定められていたら
民法第627条1項にて、「いつでも解約の申入れができる」とされているのは、「いかなる理由があっても」退職できるということです。したがって、法律上は、勤務先に退職理由などを説明する義務はなく、退職理由が何であれ当然に退職できるのです。
なお、雇用契約書や就業規則に、「退職の際には1ヵ月前に退職届の提出が必要」などのように“退職の予告期間”が規定されていることがあります。一般的には、民法第627条1項のほうが雇用契約書や就業規則の規定よりも優先されると考えられています。そのため、無期契約の場合、退職申入れ後2週間が経過すると、勤務先の同意なく、一方的に勤務先を退職することができます。ちなみに、退職の予告期間を過度に長くすることは、労働者の退職の自由を制限することになるため、許されません。
雇用の期間が決まっている有期契約の退職引き止めについて
やむを得ない事由や労働条件の相違がある場合は退職できる
雇用の期間が決まっている有期契約について、民法第628条1項では、「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。」と規定しています。これは、「やむを得ない事由」がある場合には、契約途中であっても、ただちに退職できるということです。
また、労働基準法第15条1項で、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」、2項で、「前項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。」と規定しています。つまり、雇用契約の締結時に示された労働条件が実際と異なる場合には、たとえ有期契約の契約途中であっても即時に退職することができます。
なお実務的には、企業では有期契約の場合であっても、雇用契約書や就業規則などにおいて、中途解約についての規定があり、無期契約と同様の退職を認めていることが多くあります。この場合、決められた退職の予告期間をおいたうえで中途解約権を行使(=途中退職)すれば、有期契約であっても無期契約と同じく、勤務先の個別の同意がなくても退職できるということになります。
契約の途中で辞めたくなったら
有期契約は、無期契約と異なり、雇用契約期間の定めがありますので、原則として労働者は、当初合意した契約期間中は、勤務先に対して労務を提供する義務があります(=契約期間が終了するまでは勤務しなければならない)。そのため、契約途中で退職を申し入れた場合、勤務先としては、契約期間が終わるまでは勤務を継続するよう、契約内容に従って退職を引き止めてくることが想定されます。
有期契約の場合、当初の契約で、「この期間までは働く」という合意をしているため、原則としてその日までは退職できません。仮に、勤務先にその旨を主張されて退職を引き止められたとしても、その引き止めは許容されるということです。
もっとも、労働者からすれば、病気やケガでそれ以上その仕事を続けられなくなってしまったり、勤務先での労働条件が当初聞いていた内容とまったく異なり過酷なものであったりすることもありえるでしょう。その場合には、民法第628条1項や労働基準法第15条2項により、契約途中であっても退職することができるのです。
したがって、退職するにつき「やむを得ない事由」があることや、「労働条件の相違」があることを勤務先に主張し、途中退職を認めてもらうように交渉していくことが必要となります。
退職代行を弁護士に依頼するメリット
無期契約で退職を引き止められている場合
無期契約の場合、退職申入れから2週間が経過すれば、仮に勤務先が退職に同意しなかったとしても、理論上は一方的に退職することが可能です。
しかし、勤務先から強く引き止められているようなケースでは、退職時に有給消化を申し入れてその分の賃金を請求したり、離職票の発行や退職金の支払いを勤務先に求めたりしても、実際のところ、勤務先がこれに素直に応じることは少なく、労働者本人で適切に退職手続や、それに付随する交渉を行っていくことは事実上困難なことが多いです。
この点、弁護士に退職代行を依頼することにより、退職手続はもちろんのこと、有給消化や離職票の発行など、退職に付随する諸々の交渉をあなたの代わりに対応してくれます。そのため、勤務先とやり取りするストレスがなくなりますし、より有利な形での退職が実現しやすくなります。
有期契約で退職を引き止められている場合
有期契約の場合、勤務先が途中退職に同意せず、退職引き止めが続く場合、まず退職理由として「やむを得ない事由」(民法第628条1項)があることや、「労働条件の相違」(労働基準法第15条2項)があることを会社に主張します。そして、途中退職を認めるよう交渉していくのですが、この交渉には法的知識が必要となりますので、労働者本人が行うことは事実上困難であることが多いように感じます。
また、中途解約権を行使する(=途中退職する)ためには、事実上、まず中途解約権に関する規程の有無やその内容について就業規則などで確認する必要があります。しかし、この確認はもちろん、途中退職すること自体も、労働者本人が一人で対応するのは難しいことが多いです。
この点、法的知識を有する弁護士に依頼すれば、たとえ有期契約であっても、「やむを得ない事由」があるといった主張をし、途中で退職できる可能性を高めることができます。実際、有期契約であっても、当事務所の弁護士が退職代行を行えば、スムーズに合意退職が成立し、無事に退職できることがほとんどです。
まとめ
いかがでしたか?
退職の引き止めは、無期契約か有期契約かによって、許容される範囲が異なります。
無期契約の場合、勤務先が退職の引き止めをしてきて、退職に同意してくれなかったとしても、法律上は退職申入れから2週間が経過すれば退職できます。また、弁護士に退職代行を依頼すれば、退職手続だけでなく、有給消化や離職票の発行など、退職に付随する交渉も行ってくれるので、労働者にとってより有利な退職が可能となります。
また、有期契約の場合は、勤務先が退職引き止めをしてきて、退職に応じてくれなかった場合、「やむを得ない事由」や「労働条件の相違」、中途解約権などが存在しなければ、一方的に退職することはできませんでしたね。勤務先が退職に同意してくれない場合、事実上、自身で途中退職することは困難ですが、弁護士に退職代行を依頼すれば、法的知識を駆使してさまざまな交渉が可能です。さらに、途中退職できる可能性を高めることもできます。実際のところ、有期契約であっても、弁護士が交渉すれば、ほとんどの場合に合意退職が成立します。
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監修者情報
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資格
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弁護士,応用情報技術者,基本情報技術者,2級知的財産管理技能士,ビジネス著作権検定上級(AdvancedLevel)
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所属
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神奈川県弁護士会
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出身大学
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同志社大学法学部,同志社大学法科大学院
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