残業代請求に関する基礎知識

残業代請求をするタイミング別のメリット・デメリット

目次
  1. 残業代請求ができるタイミング
  2. 在職中に残業代を請求するメリット・デメリット
    1. 覚えておきたいポイント
    2. メリット
    3. デメリット
  3. 退職後に残業代を請求するメリット・デメリット
    1. 覚えておきたいポイント
    2. メリット
    3. デメリット

残業代請求ができるタイミング

未払い残業代は、在職中・退職後にかかわらず、最大3年分を請求できます(現行法)。ただし、残業代請求権は、本来残業代が支払われるべきだった日から3年で消滅時効にかかるため、残業代が発生した日から3年の間に請求しなければ、それ以前に発生した残業代は消滅してしまいます。

在職中に残業代を請求するメリット・デメリット

覚えておきたいポイント

在職中に残業代請求をする場合、以下のメリット・デメリットが挙げられます。

メリット デメリット
  • 証拠を集めやすい
  • 時効で残業代請求できなくなることを防げる
  • 労働環境の改善が期待できる
  • 会社に居づらくなるおそれがある
  • 嫌がらせを受けるおそれがある

以上のメリット・デメリットをふまえると、「会社を退職することが決まっているとき」が残業代請求をするベストタイミングといえます。「残業代請求に必要な証拠を集めやすく、時効によって請求できる残業代が減ってしまうことがない」という在職中であるメリットを生かしながらも、「会社に居づらくなる」というデメリットを必要以上に心配しなくてよいためです。

「退職後に残業代請求をしたい」という場合や、具体的な退職時期が決まっていない場合にも、在職中に証拠集めなどの準備をしておくと、退職後にスムーズな請求ができます。

メリット

証拠を集めやすい

残業代請求において、証拠はとても重要です。証拠となる資料(雇用契約書・就業規則・タイムカードなど)は、退職後に集めようと思っても手元にないことが多く、証拠集めが難しくなります。在職中であれば、手元にあるものをコピーできるため比較的証拠が集めやすく、メリットがあるといえます。

関連ページ:残業代請求のために集めておきたい証拠

時効で残業代が請求できなくなることを防げる

残業代請求権には3年の消滅時効があるため、3年以上前の残業代は請求できません。そのため、退職後に残業代請求をする場合、時間が経つにつれて請求できる期間は短くなり、時効が完成すると、請求できる残業代はなくなってしまいます。
しかし、在職中に残業代請求をすれば、時効で請求額が減ってしまうことを防ぐことができます。

関連ページ:残業代請求の時効

労働環境の改善が期待できる

まれなケースではありますが、在職中に残業代請求をすることで、会社が残業の生じにくい業務への配置転換を命じてくることがあります。
また、残業代が支払われていなかった原因として「会社が残業代に関する正確な知識を持っていなかったから」ということも考えられるため、残業代請求をきっかけに労働環境が改善される可能性もあります。退職を考えていないものの、残業代請求をしたい方にとっては、1つのメリットといえます。

デメリット

会社に居づらくなるおそれがある

在職中に残業代請求をすることで、会社や上司から直接的に不利益な扱いや嫌がらせを受けなくとも、「会社に居づらい」と感じることもあるかもしれません。

嫌がらせを受けるおそれがある

在職中に残業代請求をすることで、不当な人事異動などの不利益な扱いや、その後の給料が支払われないなどの嫌がらせを受ける可能性は否めません。もっとも、残業代請求に対する報復としての人事異動や給料の不支給は違法です。

退職後に残業代を請求するメリット・デメリット

覚えておきたいポイント

退職後に残業代請求をする場合、以下のメリット・デメリットが挙げられます。

メリット デメリット
  • 会社に居づらくなる心配をしなくてよい
  • 遅延損害金を請求できる可能性がある
  • 証拠が集めにくい
  • 時効で請求できる残業代が消滅するおそれがある

退職後であっても残業代は請求できますが、会社に居づらくなるなどの心配をしなくてよい一方で、証拠集めや、時効の問題が出てきます。そのような問題を解消する方法としては、弁護士へ依頼し、会社へ証拠の開示を求めたり、一定期間時効の進行を止める催告などの手続をしたりすることが挙げられます。そのため、すでに退職していて、残業代請求をお考えであれば、1日も早く弁護士へ相談することをおすすめします。

メリット

会社に居づらくなる心配をしなくてよい

退職後に残業代請求をすれば、会社や上司からの嫌がらせや、不当な扱いを受ける心配はありません。「会社に居づらくなるから残業代請求ができない」という方にとっては、大きなメリットといえます。

遅延損害金を請求できる可能性がある

会社が残業代を本来支払うべき日よりも遅れて支払う場合、残業代に加えて年利3%の遅延損害金を請求できます。さらに、退職以降は、年利14.6%の遅延損害金を請求できるため、退職後に残業代請求をしたほうがより多くの遅延損害金を請求できる可能性があるといえます。

ただし、遅延損害金は訴訟を提起し、裁判で認められた場合にのみ受け取れるもので、任意交渉(示談)や労働審判で和解に至るケースが多い残業代請求においては、「会社との交渉材料」にとどまることが多いです。しかし、請求できる遅延損害金が多くなり、会社により大きなプレッシャーをかけられるという点では、メリットといえます。

デメリット

証拠が集めにくい

残業代請求では証拠がとても重要ですが、証拠となる資料(雇用契約書・就業規則・タイムカードなど)は、会社で保存・管理されていることが多いため、退職後に証拠を集めるのは在職中に比べて難しくなります。

関連ページ:残業代請求のために集めておきたい証拠

時効で請求できる残業代が消滅するおそれがある

残業代請求権は、本来残業代が支払われるべきだった日から3年で消滅時効にかかります。時間が経過するにつれて請求できる残業代が減っていってしまうため、退職後に請求をしないままでいると、請求できる残業代がなくなってしまうおそれがあります。

関連ページ:残業代請求の時効

監修者情報

小野寺 智範
弁護士

小野寺 智範

おのでら とものり
資格
弁護士
所属
東京弁護士会
出身大学
青山学院大学法学部,専修大学法科大学院

弁護士の仕事は,法的紛争を解決に導くことだけでなく,依頼者の方の不安や悩みを解消することにもあると考えています。些細なことでも不安や悩みをお持ちであれば,気軽に弁護士に相談していただけたらと思います。依頼者の方にご満足いただけるリーガル・サービスを提供していけるよう全力で取り組んでいく所存です。

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