残業代請求に関する基礎知識
残業代請求の消滅時効は3年です。つまり、残業代は最大で3年分さかのぼって請求できます。一方、3年以上前に発生した未払い残業代は時効により消滅してしまいます。
残業代請求の時効の起算点(時効期間を数え始めるタイミング)は、「賃金の支払日(=給料日)」の翌日です。
法律上、時効期間の経過がはじまるのは「権利を行使できる状態になったとき」と定められており、賃金の場合は「賃金の支払日」が「権利を行使できる状態になったとき」にあたります。ただし、実際には、民法の「初日不算入の原則」に則り、賃金支払日の「翌日」からカウントします。
たとえば、毎月末締め、翌月25日が給料日(=賃金の支払日)であれば、4月分の残業代が翌月の5月25日に支払われなかった場合、5月26日から時効期間を数え始めます。
残業代請求の時効は、賃金の支払い義務のある会社が「時効の援用」をすると完成します。「援用」とは、時効の利益を受ける意思表示をすることです。
つまり、残業代を請求したときに、会社が「時効だから残業代は支払わない」といった主張をすると、時効の効力が発生し、時効期間よりも前の残業代は請求できなくなります。
時効期間が経過していても、会社が時効の援用をしなければ、時効の効力が発生しないため、時効期間を超えて残業代を請求できることになります。
また、会社が一度支払いに応じた場合には、時効の援用はできなくなるため、請求した金額を全額支払わなければなりません。
ただし、ほとんどの場合、会社は残業代を請求された時点で顧問弁護士などに相談すると考えられるため、そのまま支払いに応じるとは考えにくく、「会社が時効の援用をしない」ということはほぼありません。
会社による残業代の未払いが不法行為にあたる場合、「損害賠償」として賠償金請求をすることになり、残業代請求権の時効ではなく、損害賠償請求権の時効が適用されます。損害賠償請求権の時効は、損害と加害者を知ったときから3年であり、残業代請求の時効を過ぎてからも請求できます。
ただし、不法行為とされるのは、会社が残業代の発生を認識しながらも意図的に残業代を支払っておらず、また従業員から労働時間の管理などを求められたり、労働基準監督署から従業員の労務管理をするように指導されたりしたのに、それを意図的に無視し労務管理を怠った場合など、相当悪質なケースに限られます。
そのため、不法行為にあたると認められるのはまれです。
残業代請求の時効の進行は、「時効の更新」をすることで止めることができます。
時効が更新されると、時効期間が一旦リセットされるため、更新されたときから再度時効期間が経過するまで残業代請求ができるようになります。
時効が更新したとされるには、債務承認、裁判上の請求(労働審判手続申立て、訴訟提起など)、強制執行などを行う必要があります。
なお、裁判上の請求や強制執行の場合には、その手続が終了するまでは、時効は止まったままであり、手続終了後から新たに時効が進行します。
また、催告や協議を行う旨の合意、仮差押えなどにより、時効の完成が猶予されます。
「時効の更新」とは異なり、時効期間がリセットされるものではありませんが、一時的に時効の進行を止めることができる、つまり、時効で残業代請求ができなくなる時期を遅らせることができます。
弁護士の仕事は,法的紛争を解決に導くことだけでなく,依頼者の方の不安や悩みを解消することにもあると考えています。些細なことでも不安や悩みをお持ちであれば,気軽に弁護士に相談していただけたらと思います。依頼者の方にご満足いただけるリーガル・サービスを提供していけるよう全力で取り組んでいく所存です。
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