【解雇された方向け】バックペイとは?もらえる条件や金額は?
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バックペイとは、解雇が法律上無効だった場合に、会社から労働者に対して支払われる未払い賃金のことです。
ただし、バックペイを請求するためにはいくつか条件を満たしている必要がありますし、請求するための手続についても知っておかなければいけません。
そこでこのページでは、バックペイについて知っておくべき内容を詳しく解説いたします。バックペイの計算方法などについてもご紹介しますので、会社に対して請求をお考えの方はぜひ参考になさってください。
- 今回の記事でわかること
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- バックペイの計算方法
- バックペイが支払われる条件
- バックペイを請求するための手続方法
- 目次
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バックペイとは
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バックペイが支払われる条件
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解雇が無効であること
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就労の意思や能力があること
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時効を迎えていないこと
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バックペイはいくらもらえる?相場はどれくらい?
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バックペイの相場
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バックペイの計算方法は?
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計算例
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解雇期間中に中間収入があった場合
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解雇期間中に失業保険を受け取っていた場合
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バックペイを請求するための手続は?
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弁護士などへの相談
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会社側と交渉
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労働審判
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訴訟
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バックペイに関するよくある疑問
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バックペイを増額する方法はある?
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バックペイは正社員以外でも請求できる?
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受け取ったバックペイに税金はかかる?
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バックペイの請求をお考えならアディーレへ
バックペイとは
バックペイとは、会社の行った解雇に正当性がなかったとき、解雇されていた期間に本来受け取れるはずだった賃金のことです。
解雇を言い渡されると、解雇日以降は賃金が支払われなくなります。しかし、解雇が撤回されて復職できた場合には、復職までの未払い賃金を会社に請求することが可能です。
不当解雇の場合、働けない期間が生じたのは会社側の責任なので、実際には業務を行っていなくても賃金を請求することができるのです。このバックペイの支払いについては、法律によってもきちんと義務付けられています(民法第536条2項前段)。
バックペイが支払われる条件
解雇が無効であること
大前提として、解雇が無効であると認められなければ、バックペイは支払われません。
会社との交渉をはじめ、裁判所を通した手続(労働審判や訴訟)のなかで、不当解雇であることを会社が認めた、もしくはそういった内容の判決が下された場合にバックペイが支払われます。
したがって、バックペイを受け取るためには、解雇が有効であるとする会社側の主張に対し、その解雇が不当であるといえる事実を挙げて反論をすることが重要です。解雇が不当であるといえる事実を証明できるような証拠を入手できるのであれば、確保しておきましょう。
不当解雇については、以下のページで詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。
就労の意思や能力があること
バックペイが支払われるには、復職して働く意思と能力がなければいけません。
そもそもバックペイというのは、「解雇されなければ働けたのに、会社の都合で働かせてもらえなかった」という労働者に対して支払われる金銭だからです。
就労の意思や能力がない場合、「働けなかった原因は、会社ではなく労働者にあるのでは?」と判断されると、バックペイが支払われないおそれがあります。
時効を迎えていないこと
バックペイの請求には時効があり、給料の支払い日から3年です(※)。
たとえば、解雇によって2025年4月25日の給料日から支払いがなくなった場合、その請求権は2028年4月25日以降にはなくなってしまいます。
同様に、5月分や6月分など、その後の請求権についても1ヵ月が経過するごとに失われていくことになるため、不当解雇をされたらすぐに行動を起こすようにしましょう。
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※労働基準法第115条では、賃金請求権の消滅時効期間は5年ですが、当面の間は3年とされています。また、2020年3月31日までの給料については、時効は2年とされています。
バックペイはいくらもらえる?相場はどれくらい?
バックペイの相場
バックペイの金額は、解雇期間や個別の事情などによって変動しますし、該当する公の統計も存在しないため、「相場の金額は○○円」とは一概には言えません。
しかし、一般的には今まで支払われていた賃金の数ヵ月分となることが多いようです。
また、バックペイに絞った金額とは異なりますが、解雇に関して裁判所を通して争った場合、以下のような金額が提示されています。
【労働審判で和解した場合の提示金額】
平均=285万2,637円
中央値=150万円
【訴訟で和解した場合の提示金額】
平均=613万4,219円
中央値=300万円
上記の金額には、残業代請求の認容額やパワハラやセクハラの慰謝料の認容額など、バックペイ以外の請求にかかる金額も含まれるので、上記の金額が必ずしもバックペイの相場ということではありません。ただ、労働審判や訴訟段階で解決した場合は、協議交渉で解決した場合に比べ、解決までの期間が長くなり、それに伴いバックペイの金額も増額することになるため、労働審判や訴訟までになったときの解決金のおおよその目安として参考にしてもよいでしょう。
バックペイの計算方法は?
バックペイの金額は、「解雇されていなければ、確実に支給されていた賃金の合計額」となります。
賃金には、基本給や各種手当、固定残業代などが含まれますが、時間外手当や通勤費は含まれません。解雇期間中に就労していなかった以上、時間外手当は確実に発生していたとはいえませんし、通勤もしていない以上、その実費を補てんする通勤費も確実に発生したとはいえないからです。
なお、賞与については判断が難しく、労働者全員に一律に支払われているような場合はバックペイに含まれる可能性が高いです。一方で、査定などをもとに個別に支払われているような場合は、バックペイには含まれないことがあります。
計算例
上記を踏まえて、実際の例をもとに計算してみましょう。
解雇日:4月30日
賃金:基本給20万円、固定残業代5万円
解雇期間:6ヵ月(5月1日~10月31日)
復職日:11月1日
上記のケースでは、25万円×6ヵ月=150万円がバックペイの金額となります。
ただし、個別の事情によっては計算が異なっているため、正確な金額で請求したい方は弁護士に早い段階で依頼することをおすすめします。
解雇期間中に中間収入があった場合
例外的に、解雇されてから別の仕事をして収入を得ていた場合には、その収入の金額を解雇がなければ支払われたであろう金額から控除します(民法第536条2項後段)。この収入のことを「中間収入」といいます。
ただし、解雇日直前の平均賃金の金額の6割は最低限支払わなければいけません。(労働基準法第26条)。
解雇日:4月30日
賃金:基本給20万円、固定残業代5万円
平均賃金:日額8,000円(※)
解雇期間:6ヵ月(5月1日~10月31日)
中間収入の合計:100万円
復職日:11月1日
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※計算をわかりやすくするために、およその金額を用いています。
上記のケースでは、まず賃金や解雇期間を考慮すると、先ほどと同じようにバックペイの金額は150万円となります。ただし、中間収入の100万円は控除されるため、金額としては50万円になります。
ただし、147万2,000円(解雇期間日数184日×平均賃金8,000円)の6割である88万3,200円は、少なくともバックペイとして支払われる必要があり、先ほど算出した50万円ではその金額を下回ることになります。
したがって、上記のケースで支払われるべきバックペイは88万3,200円となります。
解雇期間中に失業保険を受け取っていた場合
解雇期間中に、ハローワークから失業保険の仮給付を受けていた場合、その金額をバックペイから控除する必要はありません。
ただし、バックペイを受け取って復職することになった場合は、失業保険の受給要件を満たさなくなるため、仮給付の金額は返還する必要が出てきます。
一方で、会社と和解し、要望を受け入れて退職することになると、金銭の名目はバックペイというよりは解決金に近くなります。その場合、退職日によって以下のように対応が異なります。
- 退職日を「解雇日」に設定する場合:
失業保険を受け取っていた期間も確かに失業していたことになるため、返還は不要
- 退職日を「会社との和解日」に設定する場合:
解雇から和解日までは、会社に在籍していたことになり、失業していなかったことになるため、返還が必要
バックペイを請求するための手続は?
弁護士などへの相談
まずは、弁護士などの専門家に相談して、状況を整理することをおすすめします。解雇理由が妥当かどうか、法的に問題がないかなど、専門家の意見を聞くことで、今後の対応方針を決めやすくなります。
また、労働基準監督署などに設置された総合労働相談センターなどを利用されてもよいでしょう。
会社側と交渉
会社側と交渉することになったら、解雇の撤回や未払い賃金の請求など、あなたの希望を伝えて会社との合意点を探ります。
もっとも、会社には顧問弁護士や顧問社労士が付いていて、会社にとって有利な交渉が進むよう、助言していることも多いため、一般の方だけで交渉に臨むのは簡単ではありません。
その点、弁護士に依頼すれば、あなたの代理人として代わりに交渉をしてもらうことができます。弁護士には法的知識や豊富な交渉経験があるため、会社に言いくるめられてしまう心配もありません。
労働審判
会社との交渉がまとまらない場合は、労働審判や訴訟などの法的手続に進むことになります。
労働審判は、簡易で迅速な紛争解決手続である点が特徴で、原則として3回以内の期日で結論が出されます。具体的には、審判官と労働審判員が、双方の主張を聞いたうえで調停案を提示します。双方が調停案に合意して調停を成立させることで、バックペイの支払いを受けることができます。
調停が成立しない場合、審判が出されることになりますが、バックペイの支払いを内容とする審判に対し会社が異議を出すと、事件が訴訟手続に移行し、訴訟手続のなかで解決を目指すことになります。
訴訟
訴訟は、裁判所に訴えを起こし、判決を求める手続です。裁判所が、双方の主張や提出された証拠に基づいて総合的に判断し、法的強制力のある判決を言い渡します。判決では、バックペイの支払いについて命じられることもあり、会社側が拒否した場合でも強制執行で差し押さえることが可能です。
ただし、労働審判とは異なり、細かい部分まで審理を尽くす関係上、判決が出るまでに何年もかかることがある点はデメリットといえるでしょう。
もっとも、訴訟手続においても、判決に至るまでの間に、話合いによって訴訟手続を終了させる和解が成立する場合があります。バックペイの支払いを内容とする和解が成立すれば、判決によるよりは早期にバックペイの支払いを受けることができます。
バックペイに関するよくある疑問
バックペイを増額する方法はある?
弁護士に依頼することで、場合によっては増額できる可能性があります。
というのも、バックペイの金額は「解雇されていなければ、確実に支給されていた賃金の合計額」となることが一般的なので、基本的に増額などはありません。
しかし、一般の方が金額交渉を行うと、会社側に言いくるめられて、本来支払われるべき金額を受け取れないおそれがあるのです。
その点、弁護士に交渉を依頼することで、自分で交渉したときに比べて、バックペイの金額が不当に低くされることを回避することができ、その意味で増額できる可能性が高いです。
バックペイは正社員以外でも請求できる?
バックペイは、雇用形態を問わず請求することができます。
正社員だけでなく、契約社員やアルバイト、派遣社員の方でも、ご説明した条件を満たしていれば、バックペイを受け取る権利があります。
受け取ったバックペイに税金はかかる?
バックペイはあくまでも賃金なので、通常の給与と同様に、住民税や所得税等の税金をはじめ、健康保険や厚生年金保険などの社会保険料が源泉徴収されます。
ただし、訴訟を行い、判決によって強制執行を行う場合は、税金などが引かれる前の額面金額を差し押さえることができます。その場合、税金と社会保険料の労働者負担分は、代わりに会社が負担することになります。
バックペイの請求をお考えならアディーレへ
ご説明してきたように、会社側の勝手な都合で解雇されたとき、その間支払われなかった賃金はバックペイとして請求することができます。
しかし、バックペイを受け取るためには解雇が無効なものだったと証明しなければなりません。そのためには、証拠集めや会社との交渉、ときには裁判の対応まで必要になりますが、一般の方だけでそういった対応をすべて行うのは非常に困難です。
そこでアディーレでは、不当解雇に関するご相談・ご依頼を積極的に承っています。弁護士があなたの代わりに会社との交渉を行い、不当解雇の証明やバックペイの請求などが実現できるよう尽力します。
ご相談は何度でも無料ですので、一度お気軽にお問合せください。
監修者情報
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資格
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弁護士
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所属
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東京弁護士会
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出身大学
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東京大学法学部、東京大学法科大学院
裁判に関するニュースに寄せられた、SNS上のコメントなどを見るにつけ、法律家が法的な思考をもとに下した判断と、多くの社会一般の方々が抱く考えとのギャップを痛感させられます。残念でならないのは、このようなギャップを「一般人の無知」と一笑に付すだけで、根本的な啓発もなく放置したり、それを利用していたずらに危機感を煽ったりするだけの法律家が未だにいることです。法の専門家として、専門知を独占するのではなく、広く一般の方々が気軽に相談し、納得して、法的解決手段を手に取ることができるよう、全力でサポートいたします。