不当解雇に関するコラム

不当解雇されたら慰謝料を請求できる?認められるケースや請求手順を解説

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法律によって定められた条件を満たさないまま解雇された場合、「不当解雇」として法律上は無効です。
そして不当解雇が認められたら、併せて慰謝料をも請求できる可能性があります。ただし慰謝料の請求は必ずできるわけではないため、注意が必要です。

この記事では、不当解雇に対する慰謝料を請求できるケースや、請求の手順、請求が認められた事例などについて解説します。会社から不当に解雇されてお困りの方は、ぜひ参考になさってください。

今回の記事でわかること
  • 不当解雇の慰謝料請求が認められるケース
  • 不当解雇の慰謝料を請求する方法
  • 不当解雇で慰謝料以外に請求できるもの
目次
  1. 不当解雇とは何か
    1. 知っておきたい解雇の種類
      1. 普通解雇
      2. 懲戒解雇
      3. 整理解雇
    2. 解雇が有効となるための条件
  2. 不当解雇による慰謝料請求はできる?
  3. 不当解雇で慰謝料請求が認められる可能性があるケース
  4. 不当解雇における慰謝料の相場
  5. 不当解雇で慰謝料のほかに請求できるもの
    1. バックペイ
    2. 解決金
  6. 不当解雇で慰謝料を請求する手順
    1. 解雇理由証明書を会社に請求する
    2. 会社と交渉する
    3. 交渉で解決しない場合は労働審判・訴訟
  7. 不当解雇で慰謝料を請求するために必要な証拠
  8. 不当解雇で慰謝料請求が認められた事例
  9. 不当解雇で慰謝料が認められなかった事例
  10. 不当解雇の慰謝料についてよくある質問
    1. 不当解雇の慰謝料は退職後でも請求できる?
    2. 不当解雇の慰謝料に時効はある?
    3. 退職勧奨をされても慰謝料を請求できるか?
  11. 不当解雇の慰謝料請求ならアディーレへ

不当解雇とは何か

不当解雇とは、法律で認められた正当な理由がないにもかかわらず、会社から一方的に解雇されることです。
不当解雇された場合、労働者は会社に対して、復職を求めたり、解雇期間中の賃金を請求したりすることができます。また、場合によっては、不当解雇に対する慰謝料を請求できる場合もあります。

不当解雇について詳しく知りたい方は以下のページも併せてご確認ください。

知っておきたい解雇の種類

解雇には、大きく分けて以下の3つの種類があります。

普通解雇

普通解雇とは、労働者の能力不足や勤務態度不良、病気やケガなど、会社の懲戒事由以外の事情を理由とする解雇です。

たとえば以下のような場合が考えられます。

  • 能力が著しく不足している
  • 何度も遅刻や欠勤を繰り返す
  • 業務命令に従わないなど

ただし、普通解雇を行うには、客観的に合理的な理由があり、解雇が社会通念上相当といえることのほか、後述する要件を満たすことが必要です。

懲戒解雇

懲戒解雇とは、服務規程違反などの重大な非違行為を行った労働者に対して行われる解雇です。たとえば、機密情報の漏洩やハラスメント、横領などが考えられます。

懲戒解雇を行うには、就業規則に懲戒事由として明記されていること、その事由に該当する事実があること、適正な手続に基づくこと、そして懲戒処分として解雇を選択することが社会通念上相当といえることが必要です。また法律上も、懲戒解雇については厳格に定められています(労働契約法第15条)。

整理解雇

整理解雇とは、会社の経営状況が悪化した場合に、人員削減のために労働者を解雇することをいいます。

ただし、整理解雇を行う場合、以下のような要件を満たす必要があります。

  • 人員削減の必要性があること
  • 解雇対象を選ぶ基準が、客観的かつ妥当であることなど

解雇が有効となるための条件

(1)普通解雇の場合

  • 解雇理由の客観性や相当性:
    能力不足や勤務態度不良といった客観的な事実に基づいており、解雇という処分が社会的に見て相当である(逆にいえば、解雇よりも軽い注意・指導などでは改善できないと認められる)こと
  • 法律により解雇が制限されていないこと:
    労災の治療のために休業している場合や産休中など、法律上解雇することができない期間に該当しないこと(労働基準法19条)
  • 解雇予告または解雇予告手当の支払があること:
    解雇の30日前までに解雇の予告を行うか、30日分の賃金を解雇予告手当として支払っていること(労働基準法20条)
  • 労働者に解雇を通知すること:
    書面等により解雇を本人に通知すること

(2)懲戒解雇の場合

  • 就業規則への明記:
    解雇理由となる行為が、就業規則に懲戒事由として明確に規定されていること
  • 適正手続:
    対象となる労働者に対して弁明の機会を与えるなど、適正な手続を経ること
  • 懲戒処分としての相当性・妥当性:
    労働者の行為の悪質性や会社の秩序への影響などを考慮し、解雇という処分が社会的に見て相当であること

(3)整理解雇の場合

  • 人員削減の必要性:
    会社の経営状況が悪化し、人員削減が必要不可欠な状況であること
  • 人選基準の合理性:
    解雇する労働者を選択する基準が、年齢・勤続年数・能力など、客観的かつ合理的なものであること
  • 解雇回避に努めたかどうか:
    賃金カットや希望退職者の募集、配置転換など、解雇を回避するための手段を会社側が尽くしていること
  • 手続の妥当性:
    従業員に対し、整理解雇の方法などについて十分な説明を行っていること

不当解雇による慰謝料請求はできる?

不当解雇を受けた場合、精神的苦痛に対する慰謝料を会社へ請求することができることもあります。
不当解雇は、労働者の生活を脅かすだけでなく、社会的な信用を失墜させたり、将来への不安を抱かせたりして、大きな精神的苦痛を与えるものです。裁判例では、会社は不当解雇によるこのような精神的損害を賠償する責任があるとして、慰謝料の支払を命じたケースがあります。

ただし、解雇による精神的苦痛は、解雇期間中の賃金が支払われることで、基本的に償われると考えられています。したがって、実際に請求が認められるケースはそう多くありません。

仮に、賃金の支払いでも償えないほどの特別な事情があった場合には、慰謝料請求が認められる可能性があります。以下で、その具体的なケースについて見ていきましょう。

不当解雇で慰謝料請求が認められる可能性があるケース

不当解雇に対する慰謝料は、解雇が特に悪質で、通常よりも大きな精神的苦痛を受けたときに認められる傾向があります。
たとえば、以下のようなケースです。

  • 会社も解雇理由が何ら無いことを認識していながら、解雇した
  • 解雇に際して過度な嫌がらせやハラスメントがあった
  • 解雇したことを社内で公表するなど、労働者の名誉を著しく傷つけた

上記のような対応が原因で、労働者が大きな精神的苦痛を受けた場合、会社に対して慰謝料請求が認められる可能性があります。

不当解雇における慰謝料の相場

不当解雇における慰謝料の相場は、一概に「いくら」とはいえません。しかし、過去の裁判例などを参考にすると、高くとも50万円~100万円程度とされることが一般的です。

不当解雇の事案で認められる慰謝料の金額は、裁判所がさまざまな要素を総合的に判断して決定するものです。具体的には、以下のような要素が考慮されます。

  • 解雇までの経緯:
    解雇理由が不当であることに加え、解雇の通知方法が一方的であったり、労働者の人格を傷つけるような言動があったりした場合には、慰謝料が増額される傾向がある
  • 解雇による影響:
    解雇によって、労働者が転職活動に苦労したり、生活に困窮したりした場合には、慰謝料が増額される傾向がある
  • 会社の対応:
    解雇後、会社側が著しく誠意に欠ける対応をしていた場合には、慰謝料が増額される傾向がある

不当解雇で慰謝料のほかに請求できるもの

不当解雇を受けた場合、慰謝料だけでなく、その他の金銭的な補償を請求できる場合があります。ここでは、主なものを紹介します。

バックペイ

バックペイとは、解雇されていた期間に本来受け取れるはずだった賃金のことです。
なかには、「解雇期間中は働いていないのに、賃金が出るの?」と不安に思う方がいらっしゃるかもしれません。
しかし、会社の一方的な理由によって解雇された場合、働けない期間が生じたのは会社側の責任です。そのため、実際には業務を行っていなくても、賃金を請求することができるのです(民法第536条2項前段)。

解決金

不当解雇に関する紛争が生じた後、労働者と会社が交渉によって合意する際に、会社から労働者に解決金が支払われることがあります。
特に、「解雇が不当だったことは認めるが、復職はさせたくない」という会社が、労働者に復職を諦めてもらう代わりに、金銭での和解を提案することがあります。

不当解雇の解決金は、ケースバイケースではありますが、賃金の3ヵ月~6ヵ月分となることが一般的です。

不当解雇の慰謝料を請求する手順

実際に不当解雇の慰謝料を請求する場合は、以下のような手順で行っていきます。
ただし、会社との交渉や裁判所を通した手続が必要であるため、基本的には弁護士に依頼して行うことをおすすめします。

解雇理由証明書を会社に請求する

会社は、労働者を解雇する際に、解雇理由証明書を交付する義務があります(労働基準法第22条)
これらの書類は、不当解雇を証明するための重要な証拠となるため、口頭ではなく書面で請求しましょう。

なかには、会社が交付を拒否する場合もあります。しかし、会社が解雇理由を明確にしないという事実はのちの交渉で重要になるため、交付を拒否されそうであっても必ず請求するようにしましょう。

会社と交渉する

解雇理由証明書を受け取ったら、書面のやり取りまたは話合いによって会社と交渉を行います。
会社の行なった解雇が違法・無効であることを主張しながら、バックペイや慰謝料の支払いを会社に求めていくことになります。
不当解雇に伴い、精神的苦痛を受けたことを裏付ける証拠などがあれば、併せて提示しましょう。

交渉の結果、会社が一定の解決金を支払うことなどについて、お互いが合意した場合は、合意書(示談書)を作成しておきます。

交渉で解決しない場合は労働審判・訴訟

会社との交渉で解決しない場合は、裁判所での手続である、労働審判や訴訟を検討することになります。

労働審判は、労働トラブルを迅速かつ簡易に解決するための制度です。原則3回以内の期日(話合いの機会)で結論を出すことが決められているので、訴訟よりも短期間での解決が期待できます。
具体的には、審判官(裁判官)と労働審判員からなる労働審判委員会が、当事者双方から事情を聴き、調停案を提示します。調停案に双方が合意すれば、その内容で解決となります。

労働審判で解決できなかった場合は、訴訟に移行します。なお、労働審判を経由せずに、交渉からいきなり訴訟へ移ることも可能です。
訴訟は、裁判所に訴えを起こし、判決によって解決を図る方法です。ほかの解決方法と比べて、時間と費用がかかるというデメリットがありますが、法的拘束力のある判決を得ることができます。
また、訴訟だからといって、必ずしも判決に進むわけではありません。むしろ、手続を重ねるなかで裁判官からすすめられ、和解が成立するケースのほうが多数です。

不当解雇で慰謝料を請求するために必要な証拠

不当解雇の慰謝料は、以下のような証拠をもとに請求を検討していくことになります。

  • 雇用契約書
  • 就業規則
  • 解雇予告通知書
  • 解雇理由証明書
  • 解雇までの会社とのやり取りを記載した書面
  • セクハラ、パワハラに関する録音、録画
  • 医師の診断書 など

たとえば、解雇に伴いハラスメントが行われていた場合は慰謝料を請求できる場合があるため、それを裏付ける証拠は重要です。また、解雇が原因とするうつ病や不安障害など、具体的な症状が記載された診断書なども証拠となり得ます。

不当解雇で慰謝料請求が認められた事例

<事例①:東京自転車健康保険組合事件>

概要:
国の健康保険事業を代行する公法人が、健康相談室を廃止することに伴い職員Aさんを解雇しました。解雇されたAさんは、整理解雇が無効であると主張し、それに伴う賃金・賞与の支払い、さらに精神的損害に対する慰謝料の支払いを求めました。

裁判所の判断:

裁判所は、整理解雇の有効性について、人員削減の必要性、解雇回避努力、人選の合理性、いずれも立証されていないとして、解雇を無効と判断しました。
さらに、以下の事情などを考慮し、賃金の支払いだけでは償えない精神的苦痛が生じたと認め、バックペイなどとは別に、慰謝料の支払いを命じました。

  • Aさんが外部機関に相談したことなどを嫌った当該法人が、整理解雇を強行したこと
  • Aさんが妊娠中であったことを当該法人が知っていたこと
  • Aさんの復職要求を当該法人が拒否したこと

<事例②:西尾家具工芸社事件>

概要:
家具の製造販売等を営む会社で経理課長をしていたBさんが、社長との間でトラブルになり、退職することになりました。
これに対し、会社は、Bさんが上司の許可を得ずに、Bさん自身を含めた従業員の退職金関連の手続をしたり、経理機密資料を作成して会議で配布したりしたことなどを理由に、Bさんを懲戒解雇。Bさんは、解雇は不当だとして、退職金・慰謝料の支払いを求めました。

裁判所の判断:

裁判所は、今回の懲戒解雇については解雇事由が認められず、解雇権の濫用にあたるため無効であると判断しました。そして、退職金などのほかに、慰謝料70万円の支払いを命じました。慰謝料の算定にあたっては、懲戒解雇通知書のなかに、Bさんの行為が犯罪にあたるかのような記載があったことなどが考慮されています。

<事例③:アサヒコーポレーション事件>

概要:
洋酒の輸入販売などを行う会社で部長を務めていたCさんとその部下は、税関検査で商品の数量不足が発覚したことをきっかけに、会社から、商品を横領したとの嫌疑を掛けられ懲戒解雇されました。
この件について、Cさんたちは、懲戒解雇が無効であることの確認と、懲戒解雇などを理由とした慰謝料の支払いを求めました。

裁判所の判断:

裁判所は、Cさんたちが商品を横領したことを裏付ける証拠がないと判断し、懲戒解雇を無効としました。さらに、会社が十分な調査を行わずに軽率に懲戒解雇をしたことや、解雇の事実を顧客に通知したことなどが不法行為にあたると判断しました。
裁判所はCさんたちの請求を認め、会社に慰謝料の支払いを命じました。

不当解雇で慰謝料が認められなかった事例

<事例①:インフォーマテック事件>

概要:
マーケットリサーチなどを行う会社で働いていたDさんは、会社の業績悪化を理由に整理解雇されてしまいました。Dさんは、不当解雇だとして会社を訴え、慰謝料100万円を含む損害賠償や、退職金の支払いなどを求めました。

裁判所の判断:

裁判所は、業績悪化によって人員整理の必要性があったことは認めつつも、会社が解雇を避けるための十分な努力をしていなかったと判断し、Dさんに対する解雇は不当だったと結論づけました。そして、会社に対して退職時の給与6ヵ月相当の金額を支払うよう命じました。
他方、解雇を原因とする精神的苦痛の賠償をも認めることはできないとして、慰謝料の支払いは命じませんでした。

<事例②:ジャストリース事件>

概要:
リースなどを営む会社の代表取締役だったEさんは、取締役を退任したあとも管理職として働いていたところ、解雇されてしまいました。Eさんは、不当解雇だとして未払い賃金や慰謝料の支払いを求め、会社を訴えました。

裁判所の判断:

会社は解雇理由として、Eさんが高額な給与を不当に受領してきたことや、社内の不正調査に協力する義務に違反したことなどを挙げましたが、裁判所は、いずれも客観的に合理的な理由とは認めませんでした。
そして、Eさんに対する解雇は労働契約法第16条に違反するものであり、無効であると結論付けています。

ただし、月額125万円という高額なバックペイの支払いが認められたことなどから、別途慰謝料の支払いまで認めるべき特段の事情はないと判断しています。

不当解雇の慰謝料についてよくある質問

不当解雇の慰謝料は退職後でも請求できる?

退職後であっても、不当解雇の慰謝料は請求可能です。
ただし、次にご説明するように、不当解雇の慰謝料請求には時効が存在し、その期間内に請求しなければなりません。何年も経ってからでは手遅れになるおそれがありますので、できるだけ早く行動を起こす必要があります。

不当解雇の慰謝料に時効はある?

慰謝料を請求する権利には時効があり、不法行為による損害及び加害者を知った時から3年と定められています(民法第724条1号)。
不当解雇における不法行為の時点については、解雇されている間は、労働者の権利侵害が継続しているとも考えられるため、正確にどの時点から3年なのかについては争われる場合があります。そのため、解雇日から3年が経過した場合であっても請求できる可能性はありますが、確実性を考えれば、解雇日から3年が経過する前に請求すべきといえます。

退職勧奨をされただけでも慰謝料を請求できる?

退職勧奨であっても、それが強要と等しいような違法なものであれば、慰謝料請求が認められる可能性があります。
たとえば、以下のような違法な退職勧奨によって精神的苦痛を受けた場合、会社に対して慰謝料を請求することができます。

  • 退職を迫る面談を毎日行うなど、過度な勧奨を繰り返す
  • 「退職に応じなければ、解雇(または左遷)する」などと脅す
  • 会社の経営状態について虚偽の説明をして退職させようとする

不当解雇のご相談ならアディーレへ

以上のように、不当解雇を理由とした慰謝料請求は容易ではありません。また、バックペイなど、不当解雇を受けた際に請求できる可能性のある金銭は慰謝料以外にもありますが、会社と交渉を進めるためには、専門的な法律知識と経験が必要です。
もしあなたが会社から不当に解雇されてしまい、会社への金銭請求を検討されているのであれば、一度アディーレ法律事務所にご相談ください。

アディーレには、不当解雇の問題に詳しい弁護士が多数在籍していますし、不当解雇のご相談は何度でも無料です。お1人だけで悩まず、まずはお気軽にご連絡ください。

監修者情報

山内 涼太
弁護士

山内 涼太

やまうち りょうた
資格
弁護士
所属
東京弁護士会
出身大学
東京大学法学部、東京大学法科大学院

裁判に関するニュースに寄せられた、SNS上のコメントなどを見るにつけ、法律家が法的な思考をもとに下した判断と、多くの社会一般の方々が抱く考えとのギャップを痛感させられます。残念でならないのは、このようなギャップを「一般人の無知」と一笑に付すだけで、根本的な啓発もなく放置したり、それを利用していたずらに危機感を煽ったりするだけの法律家が未だにいることです。法の専門家として、専門知を独占するのではなく、広く一般の方々が気軽に相談し、納得して、法的解決手段を手に取ることができるよう、全力でサポートいたします。

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