残業代請求に関する基礎知識
いわゆる残業をした場合に、残業代を支給しなければならないことは、労働基準法第37条で定められています。
そのため、労働基準法が適用されない働き方をしている方については、残業代は出ないということになります。もちろん、契約で特段定められていれば、その限りではありません。
例を挙げると、委任契約で業務を行っている人(たとえば会社の取締役)や、個人事業主などで業務を請け負っている場合には、労働者ではないため労働基準法の適用はありません。また、特殊な業務ゆえに、法律で労働基準法が適用されない場合もあります。
もっとも、委任契約や請負契約でも、諸事情を考慮し実質的には労働契約と同様と認められる場合には、労働基準法の適用があります。また、特殊な業務であっても、場合によっては労働基準法の適用が除外されないケースもあり、その場合は時間外労働をすれば残業代が支給されることになります。
公立の学校で働く教員の方は、基本的に残業代が出ません。
給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)が適用される教員(公立の校長・副校長・教頭・教諭・講師等)には、残業代の支給はしないと定められています(給特法第3条2項)。
これは、教員の業務に以下のような特徴・事情があるためです。
ただし、教員は残業代が出ない代わりに、教師調整額(月給の4%)と呼ばれる手当が基本給に含まれるかたちで支給されます(同法第3条1項)。
また、教員の残業代について裁判で争いになっていることも多々あります(さいたま地裁令和3年10月1日判決など)。
その多くの裁判例では、極めて限定的ではあるものの、一定の事情がある場合には給特条例の規定が排除される余地も認めています。
そのため、現状の法制度からすれば、給特法が適用される公立学校の教員については、基本的に残業代は出ないことになりますが、訴訟で争うなどして、給特条例の適用が除外された場合には例外的に残業代が出ます。
国家公務員のなかでも、特別職(裁判官や自衛隊、国会で働く議員・職員)の方は、残業代が出ません。
携わる業務の専門性・特殊性から、労働基準法はもとより、一般の国家公務員には適用される法律(一般職の職員の給与に関する法律)も対象外となっています。
なお、裁判官については超過勤務手当が支給されません(裁判官の報酬等に関する法律第9条1項ただし書)。また自衛隊員は労働基準法の適用が排除される結果、残業代が支給されず(自衛隊法第108条)、国会議員についても残業代は出ません(国会議員の歳費旅費および手当等に関する法律)。
役員付自動車運転手や団地管理人など、担当する業務が断続的労働(常時作業を行っているわけではなく、待機している時間のほうが作業時間より長い業務)であり、かつ会社が行政庁の許可を得ている場合、時間外手当・休日手当が支払われない可能性があります(労働基準法第41条3号)。
ただし、役員付自動車運転手といっても、待機時間の傍らで事務作業などが頻繫に発生していれば、断続的労働とは言いがたいでしょう。その場合、通常の労働時間と同様に残業代は支払われなければなりません。
このように、断続的労働かどうかは、労務の実態に照らして判断されます。会社が「断続的労働だ」と主張しても、実態に照らした結果、断続的労働ではないと裁判所が判断することもあるのです。
なお、たとえ断続的労働であったとしても、深夜手当は支払われる必要があります。
警備員やマンションの管理人といった方は、担当する業務が監視労働(監視することがメインの業務であり、身体または精神的緊張の少ない業務)であり、会社が行政庁の許可を受けている場合には、時間外手当・休日手当が支払われません(労働基準法第41条3号)。
ただし、監視労働であるかどうかの判断は、労働基準監督署が行うものであり、会社の一方的な主張で「監視労働だから残業代は支払わなくてよい」とはなりません。
また、仮に監視労働にあたる場合でも深夜手当は支払われる必要があります。
秘書として働いている方は、業務内容によっては、時間外手当・休日手当が支払われません。
これは秘書の業務が「経営者などと同じように不規則で突発的な対応が求められるとして、通常の労働者と同じように出社・退社について厳格な制限を受けない」という理由からです(労働基準法第41条2号)。
しかし、機密の事務を取り扱うものにあたるかどうかは、以下の点を総合的に検討して判断されます。
たとえば、スケジュール管理や書類管理、来客対応といった業務がメインであれば、機密の事務を取り扱う者には該当しないと考えられるため、残業代は通常どおり支払われる必要があります。
また、仮に機密の事務を取り扱う者にあたる場合でも、深夜手当はほかの労働者と同様に支払われます。
畜産業や農業、水産業で働く方は、「事業が天候などによって左右されること」、「事業と労働の性質から、労働基準法が定める労働時間の規制になじまないこと」から、時間外手当・休日手当が支払われません(労働基準法第41条1号)。
しかし、夜10時から朝5時までに働いた場合には、ほかの労働者と同様に深夜手当が支払われます。
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