管理職に残業代が出ない理由は?場合により違法になることも!
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「管理職には残業代が出ない」
そのような話を聞いたことはないでしょうか。
しかしこれは、法的には正確な文章ではありません。
「管理監督者には残業代が出ない」というのが正しい内容です。
これは、労働基準法という法的根拠から導かれます。
現実には、管理監督者に該当しないのに「管理職」であるからというだけで残業代が支払われないケースがあります。これが「名ばかり管理職」問題です。
「管理職」や「管理監督者」といった言葉の正しい意味、両者の違いを知っておくことで、不当な残業代の未払いを防ぐことができます。
- 今回の記事でわかること
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「管理職には残業代が出ない」の正確な意味
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管理監督者とは
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管理監督者とされるための判断基準
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「名ばかり管理職問題」の実態
- 目次
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「管理職に残業代が出ない」と言われる理由は?
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管理監督者とは?
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管理監督者の概要
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管理監督者の実質的判断要素
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判断要素1|職務内容及び権限
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判断要素2|実際の勤務態様
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判断要素3|賃金などの待遇
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管理監督者該当性を否定する判断要素
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職務内容や権限
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実際の勤務態様
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賃金などの待遇
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管理職に残業代が支払われない「名ばかり管理職」問題
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「名ばかり管理職」に関する残業代トラブルの裁判例
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まとめ
「管理職に残業代が出ない」と言われる理由は?
労働基準法第41条は、労働時間、休憩及び休日に関する同法の適用が除外される例外的な労働者を列挙しています。
このうちの2号に掲げられている「監督若しくは管理の地位にある者」のことを、「管理監督者」と呼んでいます。
したがって、「管理監督者」に該当する労働者に対しては、使用者は、時間外労働や休日労働に対して割増賃金の支払いをする義務がありません。
(ただし、深夜労働に対しては割増賃金を支払う義務があります)
なお、ここでご説明しているのは「管理監督者」であって「管理職」ではないことに注意してください。
「管理職に残業代が出ない」と言われるのは、「管理職」がこの「管理監督者」と混同されていることが一つの理由です。
「管理職」は、会社内における役職を表す言葉であるに過ぎません。
「管理職」であっても、残業代は基本的にはもらえます。「管理職」であるからではなく、さらに労働基準法上の「管理監督者」に該当して初めて、「残業代が出ない」という扱いが認められるのです。
管理監督者とは?
では次に、「管理監督者」とはどのような立場なのかについて、解説していきます。
管理監督者の概要
「管理監督者」とは、行政解釈によれば、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」のことをいうとされています。
管理監督者は、労働基準法で定められた労働時間・休憩・休日の制限を受けないため、時間外労働や休日労働が発生せず、残業代についても原則として支払われません。
そして、管理監督者に当てはまるかどうかについては、形式的な役職名で判断するのではなく、その職務内容や責任・権限の範囲などの実質的な面から判断します。
つまり、名称や肩書き、就業規則の定めなどにはとらわれず、実態に即して客観的に判断されるのです。
管理監督者の実質的判断要素
実際に管理監督者にあたるかどうかの判断要素は主に3つあり、次のようなものがあります。
管理監督者にあたるかは、これらの要素を総合的に考慮して判断します。
判断要素1|職務内容及び権限
まず1つ目が、「労働時間や休憩・休日などに関する規制の枠を超えて活動をせざるを得ない、重要な職務内容及び権限を有しているかどうか」という点です。
労働条件の決定やその他の労務管理において、経営者と一体的な立場にあるためには、その分、重要な責任と権限を有している必要があります。
役職名や肩書があったとしても、裁量で行使できる権限が少なく、上司に決裁をもらう必要がある場合は、管理監督者にあたるとはいえません。
判断要素2|実際の勤務態様
2つ目は、「実際の勤務態様について、労働時間などの規制になじまず、時を選ばずに経営上の判断や対応が求められているかどうか」という点が挙げられます。
すなわち、労働時間が一般の従業員と同じように厳格に管理されている場合などは、管理監督者とはいえないことになります。
判断要素3|賃金などの待遇
3つ目は、「管理監督者の地位にふさわしい賃金などの待遇がなされているかどうか」という点です。
職務の重要さに応じた給与・賞与などの待遇において、一般の従業員と比べて相応の待遇がなされていなければ、管理監督者とはいえないことになります。
管理監督者該当性を否定する判断要素
他方、管理監督者を否定する3つの判断要素についても見ていきましょう。
職務内容や権限
重要な要素として、「経営上の決定に参画していたのか」、「労務管理上の決定権限があったのか」が問題とされます。
たとえば、次のような要素がある場合には、管理監督者該当性が否定されやすいと言えます。
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経営会議等に出席したことがないこと
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会社の重要部門の管理(人事や経営といった部門のみならず、複数の店舗を含むエリアや基幹となる支店の管理も含む)を委ねられていたとはいえないこと
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職場のパートやアルバイトの採用権限や解雇の権利がないこと
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部下の人事考課に関する権限がないこと
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職場におけるシフトの作成や所定時間外労働を命ずる権利がないこと
実際の勤務態様
重要な要素として、「遅刻や早退をした場合に減給などの制裁、人事考課での不利益がある」といった場合には、管理監督者該当性が否定される方向に傾きます。
もっとも、過重労働による健康被害防止などの観点から労働時間の管理を受けている場合には、そのことだけを理由に管理監督者該当性を否定することはできません。
補強要素(否定する方向に働く要素)としては、次のようなものが挙げられます。
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実際には長時間労働を余儀なくされている場合のように、労働時間を自由に決定する裁量がほとんどないと認められる場合
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会社が配布したマニュアルなどに従った業務に従事しているといった、労働時間の規制を受ける一般社員と同様の勤務態様が労働時間の大半を占める場合
賃金などの待遇
重要な要素として、「時間単価に換算した賃金が、アルバイトやパートなどの賃金額に満たない場合」には、管理監督者該当性が否定される可能性が高まります。
特に時間単価換算した賃金が最低賃金額に満たない場合には、極めて重要な否定要素となります。
また補強要素として、次のような場合には管理監督者該当性が否定されやすくなります。
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基本給・役職手当が不十分な場合
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特段の事情がないにもかかわらず、1年間に支払われた賃金の総額が一般の従業員の賃金総額と同程度以下である場合
管理職に残業代が支払われない「名ばかり管理職」問題
「管理職」は、会社全体もしくは一部の部署を管理する役職のことであり、会社独自で決めている概念にすぎません。
たとえ役職がついていても、労働基準法にも規定のある概念である「管理監督者」でなければ、残業代の未払いという扱いは認められず、違法となることがあります。
しかし、会社側は人件費を節約するために「管理職なので残業代を支払わない」とし、不当に残業代が支払われないことがあります。
これが「名ばかり管理職」問題です。
「名ばかり管理職」は、実態からみて「管理監督者」にはあたらないため、法的には一般の労働者と同様に労働時間・休憩・休日に関する規制を受けます。
したがって、深夜割増賃金以外の残業代や、休日割増賃金なども支払う必要があることになります。
「名ばかり管理職」に関する残業代トラブルの裁判例
それでは、「名ばかり管理職」として注目を集めた裁判例を紹介いたします。
日本マクドナルド事件
原告:大手ハンバーガーチェーン直営店の店長
事案の概要:店長が会社に対し、過去2年分の割増賃金の支払いなどを請求した事案
判決:管理監督者とは認められず、原告の支払いを認容
店長は、店舗の人事権やシフト作成の権限は有していました。しかし、その権限は当該店舗内の事項に限られており、「経営者と一体的な立場にある」とまでは言えませんでした。
そのため、「労働基準法の労働時間等の枠を超えて業務を行うことが、やむを得ないとは認められない」と判断されました。
また待遇面についても・当時、店長であった者の平均年収は700万円あまりであり、一見すると賃金面での待遇は地位にふさわしいといえますが、評価が低い店舗の店長の年収は579万円であり、店長より地位が低いファースト・アシスタントマネージャーの平均年収であった約590万円を下回っていました。
そのほか、店長は自分の労働時間を自由に決定できる裁量権があったものの、実際には月100時間を超える残業があり、実態としては労働時間を自由に設定できる状況にありませんでした。
結果として、管理監督者該当性の要素は3つとも否定され、原告である店長の残業代請求が認められることとなりました。
まとめ
今回の記事のまとめは次のとおりです。
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管理職に残業代が出ないといわれているのは、労働基準法において「管理監督者」に残業代が支払われないルールとなっており、これと混同されているから
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管理監督者に当てはまるかどうかは、職務内容や責任・権限の範囲などの実質的判断による
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しかし実態は、管理職といえども「管理監督者」ではなく、「名ばかり管理職」であるケースが多い
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「名ばかり管理職」には残業代が支払われる必要がある
管理職であっても、残業代が出ることはあります。
管理監督者にあたるか否かの判断は自分だけでは難しいため、弁護士に相談してみるのもおすすめです。
もし管理監督者にあたらず、残業代がもらえるということになれば、弁護士に依頼して残業代を請求するようにしましょう。
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監修者情報
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資格
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弁護士
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所属
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東京弁護士会
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出身大学
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中央大学法学部
弁護士に相談に来られる方々の事案は千差万別であり、相談を受けた弁護士には事案に応じた適格な法的助言が求められます。しかしながら、単なる法的助言の提供に終始してはいけません。依頼者の方と共に事案に向き合い、できるだけ依頼者の方の利益となる解決ができないかと真撃に取り組む姿勢がなければ、弁護士は依頼者の方から信頼を得られません。私は、そうした姿勢をもってご相談を受けた事案に取り組み、皆様方のお役に立てられますよう努力する所存であります。