監修者情報
- 資格
- 弁護士
- 所属
- 東京弁護士会
- 出身大学
- 青山学院大学法学部,専修大学法科大学院
弁護士の仕事は,法的紛争を解決に導くことだけでなく,依頼者の方の不安や悩みを解消することにもあると考えています。些細なことでも不安や悩みをお持ちであれば,気軽に弁護士に相談していただけたらと思います。依頼者の方にご満足いただけるリーガル・サービスを提供していけるよう全力で取り組んでいく所存です。
残業代請求コラム
公開日:
「今月はいっぱい残業したし、残業代がいつもより多くもらえるだろう」と思っていたのに、先月の給料と同じ金額しかもらえなかったという経験はありませんか?残業代について会社に聞いても、「残業代は『業務手当』として支払っているよ」、「うちは、基本給のなかに残業代も含んで支給しているよ」などと言われたことはありませんか?
このような場合には、会社が「固定残業代」という制度を導入している可能性があります。では、固定残業代制度を導入していれば、残業代はもらえないのでしょうか?いいえ、別途残業代を請求できる場合もあります。そこで、本コラムでは、固定残業代制度の仕組みを説明したうえで、どのような場合に別途残業代をもらえるのかを解説していきます。
固定残業代制度とは、あらかじめ決められた時間数の残業代について、決められた時間の残業をしたかどうかにかかわらず、決められた金額が支払われる給与制度のことです。
たとえば、「月20時間分の残業代を『営業手当』として月5万円支給する」、「基本給30万円(月20時間分の残業代5万円を含む)」といったものがありますが、毎月支払われる固定給のなかで、あらかじめ決められた残業代、ここでは月5万円が固定残業代にあたります。
この場合、実際には月20時間に満たない、たとえば18時間の残業であっても、前者であれば営業手当として月5万円が支給されますし、後者であれば基本給30万円が支給されます。
会社から、「〇〇手当は固定残業代だから…」、「基本給に残業代が含まれているから…」と言われたからといって、それが必ずしも有効とは限りません。ここからはどういった場合に、固定残業代制度が有効となるのか見ていきましょう。
固定残業代制度が有効となるためには、それが労働契約の内容になっていなければなりません。労働契約の内容になっているかどうかは、契約書や就業規則などを見ればわかります。
まずは、契約書や雇用条件通知書を確認してみてください。「〇〇手当は、月に〇〇時間分の残業代とする」などの記載がありますか?次に、会社にある就業規則(会社のルールが書いてあるもの)や給与規定を確認してみてください。就業規則は、その内容が合理的であり、従業員に周知されていれば、労働契約の内容とみなされます。そのため、就業規則に固定残業代についての記載があれば、労働契約の内容になっている可能性があります。
反対に、固定残業代制度について、契約書や雇用条件通知書、就業規則や給与規程に記載がない場合には、労働契約の内容になっていないといえるでしょう。そのため、こういったケースには、会社から「業務手当は固定残業代だ」とか「基本給には固定残業代が含まれている」と言われたとしても、そもそも契約の内容になっていないので、固定残業代制度は無効であり、会社の主張には理由がなく、残業代を別途請求できるということになります。
では、固定残業代制度について、契約書や雇用条件通知書、就業規則や賃金規程のいずれかに記載があり、労働契約の内容になっている場合には、別途残業代をもらうことはできないのでしょうか。
いいえ。必ずしも、そういうことではなく、労働契約になっている場合であっても、固定残業代制度が無効となることはあります。
裁判例では、①実質的に残業の対価であること、②給料のうち残業代部分が判別できること、この2つの条件をクリアしないと、固定残業代制度は無効と判断されています。反対に、この2つの条件をクリアすると、固定残業代制度は有効となります。
そのため、固定残業代制度が有効となるためには、契約の内容になっていることを前提に、実質的に残業代の対価であること、給料のうち残業代部分が判別できることのすべての条件をクリア必要があると言えます。
まず、「〇〇手当は固定残業代とする」など、《固定残業代が手当として支給されることになっている場合》を考えてみましょう。たとえば、「役職手当」や「業務手当」といった手当については、それが固定残業代であると決められていたからといって、必ずしも有効とは限らないので、①②の観点から個別の検討が必要になります。
一般論として役職手当は、その職責に応じて与えられる手当ともいえるので、残業代として想定されておらず、“特定の役職についた従業員全員に支給されるもの”である可能性が考えられます。同様に、業務手当についても、業務の性質に応じてもらえる手当ともいえるので、残業代として想定されておらず、“特定の業務に従事する従業員全員に支給されるもの”である可能性が考えられるでしょう。このような場合には、そもそも役職手当や業務手当は「残業の対価ではない」といえますので、①の観点から、固定残業代制度が有効とならないケースもあります。
また、役職手当や業務手当のなかに、いくらか残業の対価としての性質が含まれているとしても、そのうちいくらが残業代にあたるのか、残業代部分が判別できないため、②の観点からも有効とならない可能性があります。
次に、「基本給に残業代を含む」など、《固定残業代が基本給に含まれているとされる場合》には、残業代にあたる部分がいくらなのかわかりませんので、②の観点から、有効とならない可能性があります。
以上のように、契約書や雇用条件通知書、就業規則や賃金規程に、「〇〇手当は固定残業代とする」や「基本給に固定残業代を含む」といった記載があるからといって、必ずしもその定めが有効となるわけではありません。そのため、固定残業代制度が有効とならない場合には、別途残業代を請求できるケースもあるのです。
反対に、固定残業代制度が①②の観点から有効である場合には、まったく残業代はもらえないのでしょうか?いいえ、そんなことはありません。この場合、固定残業代としてあらかじめ支給が決まっている時間分に対しては、すでに支払われていると扱われる可能性がありますが、実際の残業時間が固定残業代として決められた時間を上回る分については、別途残業代をもらえます。
たとえば、「月20時間分の残業については、固定残業代として月5万円を支給する」という内容であれば、月20時間までの残業に対しては、固定残業代で支給されているため、別途残業代はもらえません。しかし、月20時間を超えて残業した場合には、超過分の残業代を別途請求できるといえます。
ここまで解説してきたように、会社側が、「手当として定額の残業代を支払っている」、「残業代は基本給に含まれている」などと主張していても、内容次第では、残業代を請求できる可能性もあるのです。「自分にきちんと残業代が支給されているのか」、「固定残業代制度が本当は無効なのではないか」といった疑問をお持ちの方は、専門の弁護士に相談することをおすすめします。
残業代請求を始めとした労働トラブルに詳しいアディーレ法律事務所に、ぜひご相談ください。
弁護士の仕事は,法的紛争を解決に導くことだけでなく,依頼者の方の不安や悩みを解消することにもあると考えています。些細なことでも不安や悩みをお持ちであれば,気軽に弁護士に相談していただけたらと思います。依頼者の方にご満足いただけるリーガル・サービスを提供していけるよう全力で取り組んでいく所存です。
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